「銀座ジャック 再び! 写真で銀ブラ」出版にあたって
ここに玉手箱やびっくり箱の蓋を開ける時の高揚感にも似た気持ちで本の扉を開け、ページを進めて行く写真集が完成し手元にある。
日本建築写真家協会が創立二十周年記念事業の一環として制作していた写真集「銀座ジャック再び!写真で銀ブラ」が満を持して発刊されるにあたりテスト版を見た感想を書いてみた。
最大の見せ場は観音開き八ページにも及ぶ銀座中央通りの一丁目~八丁目までの大パノラマ写真だろう。予想外の迫力に度肝を抜かれたが、そのパノラマページで表現された写真をよく見てみると街を行き交う人々の表情、ショーウインドーのデスプレイの商品まで判別出来る。
他にも四丁目の交差点に全天球カメラを据え360°の異次元の視点で捉えた華やかな銀座、晴海通りの上空にセスナ機を飛ばした航空撮影、あたかも万華鏡越しに銀座の街の隅々までを覗き見ているような錯覚させ感じさせるコラージュページ等の多様な表現方法にも興味を惹かれる。又本編の写真ページを開いてみれば、日頃現代建築を被写体としてカメラを向けている写真家達が非日常のスナップショットに果敢に挑み、一年間の時間を経て切り取った銀座の情景が斬新な写真構成と相まって魅力的なページに仕上がり大人向け絵本のようだ。銀座を八つのセクションに分けそれに見合った写真を配置している見せ方にはデザイナーがほくそ笑む顔が目に浮かび正に真骨頂だろう。
この手の写真集でありがちな硬質感が一切なく、タイトルにもあるように撮影をしながら写真家達が「写真で銀ブラ」を楽しんでいたのかも知れない。
少なくとも私自身がそうだったように。
硬質感を和らげている要因の一つは、十人の各界著名人による銀座への想いを綴ったコラムにもうかがい知る事が出来る。各人が銀座への想い、憧れ、期待、歴史、未来等まさに十人十話とも言える粋な、お洒落な銀座話を提供している。
銀座の街角に涼風がそよぐが如くに。
些か自画自賛的な新刊紹介になったようだが、読者が手にする頃にはそんな危惧は何処かに吹っ飛んでいる事を願うばかりだ。
撮影者達がカメラを片手に銀ブラを楽しんだように、次は読者が写真集を片手に銀ブラを楽しみ、撮影された場所を探すブラ銀座を楽しんでみては如何だろうか。
さあ先ずは本を手に取り表紙の扉を開いてみよう。何が飛び出すかはお楽しみ、お楽しみ。
最終章の扉の閉じる頃には読者自身も我が町銀座を闊歩している事だろう。
著 者 日本建築写真家協会
出版社 鹿島出版会
発行日 2019/9/25
A4版112P
定価 ¥3,000+税
写真集出版委員会
(posted on 2019/9/9)