七夕飾りと雨と風、袴とそろいの紅の傘。
何と皮肉な、しかし何と美しい光景でしょう。
その時から、雨を毛嫌いしてきた私にある心境の変化が生じたような気がします。
敢えて大袈裟に言えば、青空の呪縛、光と影の桎梏から解放されたような心持ちでしょうか。

春は花
夏ほととぎす
秋は月
冬 雪さえて
涼しかりけり

 一見あたりまえのような道元禅師の和歌の指し示すものが、ほんの少し分かったような気がします。

梅雨の晴れ間は何時にも増して貴重ではありますが、梅雨とは本来、雨を愛でるときなのかもしれません。
織姫様、彦星様、本当にごめんなさい m(^o^)m

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 どうやら七夕飾りのようです。

神奈川の七夕祭りと言えば平塚が有名ですが、鎌倉の七夕祭りというのは知りませんでした。
それもそのはず、つい最近観光用に復活したもののようです。一応古式に則ったお祭りで、7月7日には神楽の奉納もあるそうなので、一度観てみる事にしました。

▲ 写真集掲載写真

(Copyright  芦 直人)

雨を愛でるとき

芦 直人

 我が半生を振り返れば、空の色に一喜一憂する毎日であった事を痛感します。
自然という抗えきれない力のもと、じっと最良のときを待つ緊張感、そして撮り終えた時の達成感には、それなりの快感を覚えます。しかし如何に己の生業の為とはいえ、雨をことさら忌み嫌う自分に違和感を覚える事もあります。

「日本は、春夏秋冬に梅雨を加えた五季の国だ。」そんな事を誰かが言うと、妙に納得したりもします。
 齢50を過ぎて漸く、目先の損得を忘れて雨を愛でる、そんな心の余裕を欲するようになった気がします。

 七夕祭りを太陽暦で執り行うと、ちょうど梅雨時にぶつかってしまいます。
この日も午後から雨が降り始め、水溜まりの出来始めた若宮大路を、傘をさしてとぼとぼと歩いて行くと、
雨はますます本降りになり、おまけに風も吹いてきました。 とりあえず、カメラをバックに仕舞おうと思ったその時、紅の傘をさした巫女さんが、石段をおりてくる姿が目に入り、思わずシャッターを押しました。

 2010年7月1日、たまたま若宮大路を通りかかると、鳥居に見慣れない飾り付けがあります。
折しも梅雨時には珍しく、どんよりとした雲間からぽっかりと青空がのぞき、日も差込んできました。私は条件反射のようにカメラを取り出し、車を駐めて若宮大路を歩き始めました。