こんな経験から始まった中国でしたが、あれから23年、日本の10倍の人口、25倍の広さの国土、ご存知のように劇的に変化し、昨年はオリンピックが開かれたのです。

 そんな中国の懐かしい民居写真集?味わって下さい。

                         木寺安彦



右は、1991年4月発行、建築資料研究社刊
4660円+税

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田縲抗の長円楼
(文昌楼)内部

追伸

 2008年、7月福建省土楼群の一つである「田縲坑」(ティエンルオコン)が世界遺産となりました。
三つの円楼、長円楼、方楼からなる土楼です。
(所在地 南靖県書洋鎮上板寮村)

 1月24日 NHK、探検ロマン世界遺産で「ふるさとは謎の建物〜福建土楼群」として放映され
ました。

 この度、16年振りに2冊目の中国民居の本がでました。(客家民居の世界、風土社刊)
思い起こせば1985年東京芸術大学の中国民居研究会に誘われ、第2回安徽省徽州民居見学調査からでした。

 まだ中国は全面開放されてなく、場所によっては初めての外国人ということで村中総出の歓迎に驚き、動物園の「檻」の中にいる変わった動物を見る状況の中での取材、学生は巻尺で測り野帳を作り、そして私は写真を撮り、あわただしく風のように通り抜けてしまう行為に、中国の方は一体これは何事だろうと思って見ていたと思います。特にポラロイド写真には魔術師のような驚きで評判になったものでした。

 ようやく出逢えた円形土楼。自然に溶け込み大きい、なぜ円いのか?
素朴な疑問を抱えて内部を訪れ、見上げる様に厚く重い土壁の大門を抜けると、思ったより明るく広い、そして繊細な木組みに包まれ柔らかな光が満ちた生活が展開されていました。あふれるばかりの人々のざわめき、ニワトリ、アヒル、ブタ等が走り回り、同心円を描く回廊の小部屋よりかまどの煙が立ち上がり、洗濯物、干し物、ザル等、いろんな物が軒先に下げられ揺れていました。
 床に敷き詰められた小石は濡れて黒く光り、井戸端の洗濯岩は鈍く重い。戸口に貼られた縁起の紙は鮮やかな紅色、屋根瓦は苔むして緑色が目に優しい。円形土楼の内部は、鮮やかな光、色、音に満ち、賑やかな有様はなぜか懐かしい生活風景でした。

客 家 民 居 の 世 界

 翌年(1986年)中国福建省へ、役人、著名人、地元の役人との懇親会、観光名所を経て、時速30〜40kmで進む日本製マイクロバス。入国して5日目、沢道を右へ左へ、そして上下に揺られながら狭い山道、土壁に沿うように曲がりうねって登り、山々に立木は少なく山頂まで鮮やかに等高線を描いて水田、畑が重なり合い、いくつもの峠を過ぎていきなり眼下の山裾に円形土楼に遭遇した、いや発見した。
 これはUFOが天から舞い降りて来たような、水田の谷合の曲がりくねって流れる川岸の膨らみに、静かに黒いUFOがいくつも漂っていたのです。見た事もない怪物が眼前の谷間に横たわっている姿に、呆然と見とれていました。