日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム
column

益子を訪ねて 

私は一人旅をするのが好きだ。出張に出かけても1〜2日多く訪れて、感性の赴くままの時間を作る。よって月の半分が出張となることも少なくないのは、ここだけの話。

話は変わるが私の本拠地は日本橋小伝馬町という下町の小さなスタジオ。道を隔てて馬喰町があり岩本町がある。ここには多くの雑貨店やカフェ、画廊やアーティストの事務所が点在している。その中に私がよく陶器を購入する馴染みの店がある。独特な世界観を凝縮した何とも心揺さぶる雑貨店なのだが、その本拠地が益子にあることは有名で、一度訪れたいと兼ねてから望んでいた。

秋葉原から関東やきものライナーという粋な名前の定期運行バスが益子に向けて出ている。
1月最後の日曜日。午前8:20発のそのバスに乗ると午前11:00前には益子に着く。終点である益子駅の一つ前、陶芸メッセ入口というバス停で降り、雪の残る益子の街をゆっくり歩く。

田んぼ

降雪の翌日の雲一つない青空。
トタン屋根の氷柱から滴る雫。
雪解け水でできた鏡のような水溜り。

そんなものに気を引かれながら、しばらく歩くと一軒の古家具屋に巡り合う。この時点でもう帰っても損はないと思えるほどのほりだし感。とはいうものの益子に到着してまだ1時間と経っていない。店を徘徊しているうちに、ある家具に一目惚れし、寸法まで測ったが衝動買いする気持ちを抑えて店を後にする。

  • カフェ店内1
  • カフェ店内2
  • カフェ店内3

例の雑貨店の本拠地はそこから20分ほど歩いた先にあった。
その雑貨店の敷地内にはヘアサロンがある。5坪ほどの小さな小屋を一人の男性スタイリストさんが切り盛りしている。実は12時半に予約を取っていた。ここまで来たのだからスタイリストさんに任せることにした。
が、元々5cmほどの短髪がみるみる床に落ちていく。高校時代以来の短さには少々驚いたが、骨格や顔立ちから判断されていることが伝わってきた。髪を切るという行為がまるで次のステップへの扉の様に感じた不思議な時間と空間。出来ることなら毎月伺いたい。

雑貨店にはカフェもある。ランチは一種類のみだったが居心地の良い空間で素材にこだわった食事ができる。器などのテーブルウェア、オーガニックな服や食材、音楽までも洗練されている徹底ぶり。料理が趣味の自分には時間を忘れる空間だ。

  • カフェ外観
  • カフェ店内6
  • カフェ店内4

戸惑いと感動と気付きをくれたその地を後にして、帰路のバスまで1時間半ほど更に歩くことにした。今年に入ってほぼ毎日1万歩は歩いている。お陰で頗る体調が良い。ロケや大型の竣工写真撮影の日は、普通に仕事をしていればその目標を達成する。しかしスタジオでの撮影やデスクワークの時はジムで補う必要がある。ただこの日は、様々なものに目を奪われているうちに15,000歩を歩いていた。

道路

写真を撮ることを業としていて最も大切だと感じることは、感動のバロメーターを常に持ち続けていられること。私は旅でそれを養っているのだろう。その旅とは広義の旅だが。
これからもいつまでも旅人でいたいと思う。

  • 自然風景
  • 氷
  • カフェ店内8
  • カフェ店内5
  • カフェ店内7
  • 古民家内

(posted on 2016/3/24)

川村剛弘

Writer:

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