四半世紀ものあいだ、横浜や横須賀の港

周辺の倉庫街や工場地帯や全国の米軍基地

の街を撮影しています。なんといっても、そう

いう街を彷徨いながら「コレワッ!」といった

風景にカメラを向けるのが至福なのです。

昨年秋に出版した「倉庫 横浜・横須賀」

(ワールドフォトプレス刊)という写真ムック

も記憶の中に沈殿していた都市風景を集め

た物です。

 横浜港には明治から大正、昭和初期の倉庫

が数多くあり独特の港の景観を形づくってい

ました。しかし再開発で古い倉庫はほとんど

取り壊されてしまいまったく新しい街になっ

てしまいました。あらためてその変貌ぶりに

は驚くばかりです。横須賀には旧海軍時代の

巨大な鉄骨倉庫群がまだいくつも残ってお

り、近代化遺産として貴重なものになってい

ます。かつて日本の表玄関だった横浜港、そ

して、日本の近代化のさきがけの都市だった

横須賀の軍港風景をまとめた1冊です。

 私は建築写真家で新旧の建築写真を撮る

ことを生業にしていますが、実は建築単体よ

り、それを取り巻く風景に興味があります。つ

ねづね建築は風景と感じてきましたし、その

ように意識して建築写真を撮ってきました。

さらに言うなら都市のランドスケープに強い

関心をもっています。


 建築は風景の中に佇んで、また、生活者と

かかわって、はじめてその存在を見るものに

訴える力を持っていると思います。良い都市

や魅力的な街の概念は幅が広く個人差もあ

り簡単に言い表すことはできませんが、そん

な建築の集合体としての魅力がその都市の

エネルギーや匂いや美や混沌となって、人間

の五感を刺激するのでしょう。

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 3つめは長崎の軍艦島です。2005年に野母崎

から早朝渡し舟で上陸して撮影した写真です。

この3つの場所は基本的に立ち入り禁止区域で、

やや強引に撮影した写真も多くあります。日常か

ら非日常へ、平穏から小さな冒険へ、境界線をちょ

っと跨ぐとまたちがった景色が見えてきます。

「写真展・境界線の彼方へ」に寄せて

 先ほど、好きな風景にカメラを向ける時が至福といいましたが、現実どうなるものともわからないテーマを撮り

続けていくのはたいへんです。経費は膨大にかかるし気力、体力も徐々に衰えてきます。また業界もキビシー状況

が続き、なかなか出版まで漕ぎ着けるのはむずかしくなっています。でも、撮りたいモノ、撮らなくてはいけないと

自分が思う被写体がある以上、なんとか重い腰を上げて行動に移しています。撮影が終わったあとの一杯のビール

の、あのうまさを楽しむために、、、。(なぜか、仕事写真の時よりはるかにウマイ)

                                                   安川千秋

 藤沢駅北口、旧赤線街のあった路地裏

にひっそりと佇む町医者の建物。昭和の

面影を色濃く残す空間を、そのまま使った

ギャラリーで開催いたします。照明等は不

十分ですが当時の雰囲気は楽しめると思

います。

内容は3つのテーマからなります。1つは

横須賀の長井にあった米軍キャンプ地。

ハウスやシアターからファイアーステーシ

ョン等が建ち並び、小さなアメリカ村をつ

くっていました。80年代後半から90年代

前半に撮影したものです。

Copyright Chiaki Yasukawa

 2つ目は、横浜・大黒埠頭の埋め立て工事のランドスケープです。

埋立地というのは不思議な空間で、産業廃棄物や残土でできた人工大地ですが大都市

の中で大自然を感じるところでもあるのです。日の出から日の入りまで遮るものなく見る

ことができるし、渡り鳥も多くやってきます。そんな人工物と自然界とのセメギあいを

表現しました。