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 この珠玉の修道院を訪ねる旅もこの夏の旅で終わりを迎えます。秋には目も鮮やかな紅葉を目にすることができ、冬は−15度の厳冬の世界が待ち受け、復活祭の頃の新緑となかなか日本では体感できない季節感を味わってきました。

 今年の秋か冬にはこれらの写真で個展を企画していますが、この個展が終われば少々いや大変厄介なイタリアのロマネスクの建築行脚の旅を始めます。
 なにかパンドラの箱を開けるようで少々不安でもあるのですが皆さんも気を長くして待っていて下さい。



             堀内広治

 この地方の教会の簡単な歴史を振り返れば、この地を治めていたモルトバ公国が輝く黄金期を迎えた16世紀初頭に始まります。この時期は隣国のオスマン朝も最盛期を迎えていた時期と重なり、その庇護の元急激にその領土を拡大していきました。当時の名君のシュテファン三世は戦いで勝利をおさめるたびにこれを祝して聖堂を建立し、その後の三世代の王が建立した聖堂が当時は12か所あったそうです。

 そのうち、ヴォロネツ、モルトヴィツァを含む七つの修道院が世界遺産に登録されています。その中でもフモール修道院は赤が基調のフレスコ画、アルボーレ修道院は輝く緑色、パトラウツィ修道院は巨大なフレスコ画が有名で、それぞれが個性的な表情を今に伝えています。

 フレスコ画と言えば、西欧で目にする宗教色が強い内容を想像しますが、この地のフレスコ画は、勿論教会の外壁に描かれているので聖書の内容を絵にした宗教色が強い場面も見受けられますが、それとは正反対の世俗的なユーモラスな絵も多々見受けられなかなか興味深いです。
 いくら庇護下にあったとはいえ、宗教感が全く違うトルコ人を題材にした絵が特に興味を引き、ことごとく彼らを悪人扱いしています。たとえばモルトバ軍がオスマンの首都コンスタンチノープルを包囲し陥落寸前まで追い込んでいる場面などはどの絵よりも大きく書かれていて思わず苦笑してしまいます。

 この数年間ルーマニアに通っています。以前、フランスとスペインのロマネスク様式の教会と修道院の本を出版し、次はいよいよイタリアのロマネスク建築への建築行脚への気分転換のつもりが、すっかりこの地の建築の魅力に取りつかれてしまいました。

 ルーマニアと言えば悪名高きチャウシェスクが支配していた首都ブカレストを思い浮かべますが、私が通っているブコビナ地方と呼ばれる一帯は、それはそれは長閑な処です。首都ブカレストから北に約500kmのところに位置し、車で30分も走ればウクライナという国境地帯です。この地方の中心都市のスチャバまで鉄道で約6時間、そこからは車をチャーターして教会を巡ります。

ヴォロネツ修道院

フモール修道院

フモール修道院

フモール修道院

フモール修道院

ヴォロネツ修道院

ヴォロネツ修道院

プトナ修道院

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モルドヴァ修道院