日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム
column

心に残った思いで!! 辻内幹典

心に残っている景色は、何年経っても色褪せない。しかし、その場所にいた大切な人の目の先にあったものを、知らない誰かがカメラを向けていたものを、あなたの表情をはっきりと思い出せるだろうか。

素晴らしい景色は、「決して忘れないでおこう」と心に決めるだろう。しかし、その景色は次第にはっきりとしたものではなくなる。色褪せることはなくとも、その時に目に映った全てがはっきりと残ることはほとんどない。何より、その場所に訪れた自分の姿は自分では見えていないため、記憶にも残せない。私は、写真とはそのような場面でこそ活かせるのではないかと考えている。

写真を撮ることのメリットはいくつもあるが、今回は建築物を対象とした景色を撮影することを想定して述べる。建築物には多くの想いが込められている。スペインのサグラダファミリアは良い例だ。ガウディは自然を愛し、造形一つ一つにこだわり設計した。サグラダファミリアは何度も訪れたいほどに素敵な場所ではあるが、日本からは遠く、もし訪れたとしても人が多すぎてゆっくり見て回ることは困難である。その時に、記憶の一助としてシャッターを切ればよい。自分が実際に見て「いいものだ」と感じたのであれば、ぜひとも記憶にとどめておきたいものだ。鮮明に残しておくことは写真があれば容易である。これは一番のメリットであろう。そして、人が多くて間近で見られない部分も、ズーム機能で肉眼よりもはっきりと見えるのが2つ目のメリットだ。共有することも簡単であるのが写真の良いところであるから、自分が感動した写真を他者に見せて、感動を味わってもらうこともできる。自分が楽しむために写真を撮ることも、他者を楽しませるために写真を撮ることも、どちらも素敵な活動であり、他者に感動を与えて現地に向かわせることができれば、他者の思い出をつくる一助になる。

写真の技術の磨き方は人によって方向性も様々であるから、どのような技術がいいかは好みの問題である。確かなことは、自分が感じた感動を反映した作品にすることが重要ということである。自分が感じた感動や気持ちを表せる構図を探して、持ちうる技術を組み合わせ、シャッターを切ることができれば、少なくとも自分にとってはいい思い出となる。そして、公表するかしないかは別として、1枚くらいは大切な人のキラキラした目や自分の表情を景色と一緒に写した写真を持っておくと、その時の気持ちが自然とよみがえってくる。

(posted on 2020/2/28)

辻内幹典

Writer:

back to top of this page
TOP