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日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム

Column

「渡辺義雄の眼 伊勢神宮 イタリア・モスクワ」

会 期:2016年10月27日(木)~11月9日(水)
会 場:東京・四谷 ポートレートギャラリー 日本写真会館 5階
    新宿区四谷1-7-12  電話 03-3351-3002
    JR・地下鉄丸ノ内線四ツ谷駅下車5分

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「これが建築の原形かなと思ったといきに、目が覚めたような気がした」

渡邊義雄は、初めて御垣内の建物を見たときの印象をこう語っている。実際に見てみるとまったくシンプルで、これまでに見た寺院や神社とまったく違う造りであった。一面に敷きつめられた白玉石に、深く突き立つ掘立柱や、厚い板壁、茅葺き屋根といった、単純明快で強い直線的な構成。最初の撮影では、正面を撮ることは許されなかったため、裏側から撮影した。しかし、階段があって幄舎ついている正面よりも、裏から見た方がシンプルな構成日がよくわかると渡辺は言う。

「雲というのは情緒的。建築写真は情緒が入っていないほうが私は好きだ。雲が入ると何となく風景的になるから、雲一つない快晴の方が、建築の純粋な形が撮れる」と渡辺は言う。伊勢神宮の撮影でいちばん気を遣ったのが雲だ。被写体が信仰の対象であっても、客観的なまなざしで撮る。それが渡辺義雄の建築写真に対する考え方である。それでも、決して信仰をないがしろにしない撮影姿勢が、3度も渡辺に伊勢神宮を撮らしめたといえる。

戦前は伊勢神宮の御垣の中には神官など限られた人しか立ち入ることができず、写真も御垣の外から撮影されたものしかなかった。渡辺義雄が昭和28(1953)年、昭和48(1973)年、平成5(1993)年と3度の遷宮を撮影できたことは、写真界のみならず歴史的快挙といえる。
イタリア・モスクワは昭和31(1956)年に撮影したものである。

渡辺義雄(1907~2000)
新潟県生まれ、東京写真専門学校(現・東京工芸大学)卒業。オリエンタル写真工業入社。『フォトタイムス』等の撮影、編集に携わる。「新興写真研究会」に参加。新興写真の旗手となる。戦前から建築写真の先覚者として活躍。戦後は建築写真を極め、帝国ホテル、法隆寺、東大寺、新宮殿などを撮影。昭和28(1953)年、第59回式年遷宮に際し、以降、20年ごとの1973年、1993年と3度にわたり撮り続ける。1957(昭和32)年から23年間、日本写真家協会会長を務める。文化功労者に認定。東京都写真美術館初代館長。日本大学教授を務める。写真集に『帝国ホテル』『伊勢神宮』『奈良六大寺大観』などがある。

(posted on 2016/10/17)

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