街歩き(43)シエナ(イタリア)
トスカーナのポコポコとした緑の丘をいくつか越えて進むとマンジャの塔が遠望できる。学生時代プラートという田舎町に滞在していた時期があり、友人のスクーターを借り幾度となくこの風景を眺めていた。
半世紀ほど前の話しだが眺める景色に時は感じられない。
町の名前はシエナ。
フイレンツェと並び称されるトスカーナの古都だが、糸杉とブドウ畑に囲まれ、城壁が町をぐるりと取り囲む情景はフレンツェで感じる都市感は全くない田舎町だ。
町の中心は独創的な扇形の形状をしたカンポ広場。南にはマンジャの塔を有するプッブリコ宮殿(市庁舎として使用) 北側には中世来の建築が壁のように立ちはだかり広場の形状を造りだしている。
世界一美しい広場に推する人もいるのが大いに頷ける。
個人的にはスペイン サラマンカのマイヨル広場がお薦めだが。
この広場より中世来の階段、石畳の迷路のような町並みを抜けると視野が開け眼前に白黒のストライブの巨大な教会が飛び込んでくる。ドゥオーモと称される町一番の巨大建築だ。
12世紀に起工され完成は14世紀末と長い歳月が投じられた。
内部は素晴らしい装飾を施したフレスコ画飾られ、一番の見所は床面のモザイク画で56の宗教画面が大理石の象嵌で表現され、双方で神秘的な大芸術空間を創り出している。
カンポ広場に話しを戻すと、やはりパリオの話しが必要だろう。
毎年、7月、8月にこの広場で行われる12世紀に始まったシエナの町の17のコムーネ(地区) 対抗の競馬レースだ。
当日は各地区の出場する騎手と馬は地区内の教会で祈りを捧げ、その後各地区の選ばれた若者が中世時代の衣装に身を包み、地区の旗を振りつつカンポ広場へパレードを行う。
レースは広場を3周する約1,000mの仮設のコースで行われるが、鞍は用いず手綱のみを用いて騎乗するが、筆者も
過去に落馬多発のレースを見たことがあった。
まさに命がけのレースだが、地区対抗戦のせいなのか多くの参加している若者たちを見ているとその多くがトランス状態に入っているようで狂気を感じずにはいられなかった。
そんなシエナの町だが行く度に学生時代にはお金がなくて到底入れなかった広場に面したピッツェリアに足が向いてしまう。
当時は1枚のピッツアを買うお金もなかったという事か?




(posted on 2025/10/3)