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日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム

Column

NO PHOTO NO LIFE㊶ 続く撮影の旅

カメラを共にする長旅は最高だが、期間が長いほど帰路に着いた後のしわ寄せも大きく、忙しい毎日に追われ、先月はコラムの入稿をすっかり飛ばしてしまった。
今は11月中旬だが、京都、富山、新潟での撮影を行いトンボ返りで大分での撮影という行程まで10日を切った今日、バタバタとスケジュール確認を行っていたら、今月のコラムの締日が既に昨日だった事に気付き、慌てて原稿を書いている始末だ。

建築写真に金銭的な対価を払っての依頼は、比較的「出来上がったもの」竣工としての記録写真での仕事が多い訳だが、朽ちて廃と化してゆくものを撮るという機会にこの1,2年出逢った。
廃は人々から忘れられたように、人目のつかない場所でひっそりと果てていく事を待っている事が多いように感じられるが、残すべき史実なのか忘れべからずの史実なのか、、、いづれにせよレンズを向けられる廃には、竣工当時その建物に与えられた使命という物が大きくかかわっている事に気付いた。

写真は9月の長旅の間に撮った長崎県西彼杵郡西海町に遺る「石原岳堡塁跡」
日露戦争の海戦でバルチック艦隊を撃破したため、実際には使用されることのなかった堡塁跡だ。今は石原岳公園の一部として保存されているが、人気のない静寂の中に見るこの堡塁跡は「戦争」という軍事施設としての使命を背負った建物としてその重い史実を背負い続けている哀しみが漂っている気がした。

2023年のいま、世界はロシアとウクライナやパレスチナの問題など戦争が起こっている。
これ以上、悲しい使命を背負わされる建築物が増えない事を切に願うばかりだ。

(posted on 2023/11/20)

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