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日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

設立25周年企画展
25th anniversary exhibition

コラム

Column

街歩き(38)ツェルマット (スイス)

 6月の出張で訪れたスイスの地方都市ツェルマットについて書いている。
この町はスイス最高峰のモンテローザ、マッターホルン山麓に位置する標高1620メートルのスイスを代表する観光都市である。町の人口は7千人弱の小さな町ではあるが、マッターホルンへの登山客はじめ周辺のゴルナーグラード山系への登山ブームが拍車をかけ多くの観光客を引き寄せ、今では多くの雇用が地域経済を潤しホテル、レストラン等の観光関係者が町の人口の半数を占めているらしい。
 スイスは多言国家として知られ地域ごとに公用語が分かれているが、この地域はイタリア語を公用語として日常的に話されていている。体感としてはイタリア国境に近いせいかイタリアから国境を越えてのイタリア国籍の観光従事者が多いようで、イタリア語、次に英語の割合で耳に入ってくる。
ちなみにスイス第一の都市であるチューリッヒはドイツ語、西のジュネーブ辺りだとフランス語を日常的に話している。

 この町を有名にしている観光対策の一環として独自のエコ対策を長年にわたって構築していることを述べねばならないだろう。
筆者自身が最初訪れた半世紀近く以前にもそうだったが、町中では全てのガソリン車の乗り入れが禁止されていて、それこそ半世紀近く前には二頭立ての馬車が町中で多く見られた事を思い出した。
さすがに現在では馬車は見かけ無かったが、小型の電気自動車が多くの観光客をホテルの送迎へと忙しく走り回っていた。

 我々も先ずは町の郊外約2kmに設けられた駐車場に車を止め、そこからは町の入り口近くにある鉄道駅まで専用の鉄道で向かうことになる。全ての観光客がこの規則に従って行く以外に町へ向かう方法は無い。タクシーでもこの駐車場で下ろされる。
その後は駅からそれぞれの滞在先に電気自動車で向かうことになるが、町自体が大きくないことも有り大半の訪問者は鉄道駅から徒歩での移動を選択しているようだ。

 今回の訪問は町を中心に四方八方に張り巡らせられている登山鉄道の取材だ。
一つの例を挙げれば、この町を起点にして登山電車、ケーブルカー、ロープウエーを乗り継いでいけばイタリア側の町にも行くことも出来るが、あまりにも高額なチケット料金には閉口する事になる。
その中で高額なチケット料金を払ってでも是非ともお薦めしたいのがゴルナーグラード鉄道で行く標高3131メートルの展望台だ。この展望台からは4千メートル級の山々が360度のパノラマで望め、沿線からはピラミッドのように尖った山容が感動的なマッターホルンが色々な表情を見せてくれる。
全てを忘れさせてくれる絶景といっても過言ではない。
又、忘れてはいけないのはこの登山鉄道には数カ所の途中駅があり、全ての駅で途中下車をしたが鉄道ファンにはたまらないだろう。全線ラックレールの当鉄道では途中駅は信号所の業務を兼任していて間近にラックレールのシステムを見ることが出来る。
これ以外にも町を中心に多くの登山鉄道が張り巡らされていることは先に述べたが、とにかく高額なチケット料金には驚愕するばかりだった。
元々登山電車の料金の高額は覚悟の上だったが想像以上の円安がさらに拍車をかけたようで、怒りすらおぼえた。

 さあ次は物価高のスイスを離れどこに行こうか思案のしどころだが、今年中にドバイ、バルセロナ、インドと出張が続くがどこに行ってもこの円安傾向に暫くは悩まされそうだ。
何とかしてくれよ。

(posted on 2023/11/6)

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