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日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム

Column

NO PHOTO NO LIFE ㊳ 対談企画
ゲスト シンガーソングライター 山田尚史さん
~4年ぶりの再会はアー写撮影から始まって(前編)~

前書き
シンガーソングライターの山田尚史さんとの出会いは今から約11年前の2012年に遡る。
神奈川県の藤沢という街で本当に沢山のお世話になったミュージシャンの方が分けてくれたご縁の一つだ。山田さんはいつも明るく朗らかで穏やかな人だ。
出会いのその時も勿論そうだった。その明るく朗らかな穏やかさが彼の歌を聴いて温かな優しさに感じるまで時間はかからなかった。その後山田さんとは度々、色々なシーンでご一緒する機会を頂く事になるのだが、その中でも僕は2013年の6月28日に東京の阿佐ヶ谷のライブハウスで見た彼のライブと彼の投稿をはっきりと覚えている。
それは、生きていく中で世の中の多くの人が、もがき、苦しみ、それでも前向きに生きようとするそんな人々の素直な心の代弁者の一人の姿があったからだ。

あれから時は流れて、僕も山口県へと拠点を移すことになり線が点となってしまい、一旦は疎遠な距離になってしまったが、人生の縁とは不思議なもので2018年頃から彼が全国ツアーを行うほどの活躍を見せ、消えかかっていた点は、再び線となり彼との縁を繋いでくれている。
今回、東京から西の方面に向かっての全国ツアーのさなか、彼にとって約10年ぶりとなるアー写(アーティスト写真)の撮影を担当させて頂く事になりこの5月に撮影を行った。
「歌う事=生きているそのもの」と公言する吟遊詩人の彼と撮影から約半月ほど経過して写真について対談をさせて頂いた。今月のコラムはその前編となります。

 

 

写真は「知らないわたし」に出会うツール

西田
先日はお疲れさまでした。
(6月4日に行われたシンガーソングライター工藤江里菜さんの20th&birthday Liveで山田さんはバンドのサポートメンバー、僕はライブフォトの撮影者として偶然仕事の現場が同じだった為に山田さんのアー写撮影が行われた5月22日以降、東京の下北沢で一度再会を果たしている)

山田氏
写真の評判が周囲からめっちゃ良くて!

西田
本当に!それは安心しました。
不評だったらどうしようかと思ってたから(笑)
それでは、まず始めにいつもアーティストさんをゲストでお招きした時に決まった入口から対談に入るのですが、アーティスト「山田尚史」にとって写真とは何ぞや!?というところからスタートします。漠然とした質問で難しいかもしれませんが、思いつく事を述べて頂けたらと思います。

山田氏
写真とは何ぞや? う~ん、、、

西田
アーティストとしてのフミさんにとって写真とは?って聞かれたら?

山田氏
「知らないわたし」に出会うツールですね。

西田
さっそく今日一つ目の名言が出ましたね(笑)今回のサブタイトルそれにしよ!(笑)

山田氏
アーティストとして撮られている瞬間って自分で自分を見れていない瞬間なんですよね。ステージングしているとき、歌っているとき、そういう自分を鏡で見る事が無いので私が写っているのに私じゃないような、、、そういう意味で「知らないわたし」に出会わせてくれるものですかね。

西田
なるほど。
では次に「アーティストにとっての写真の必要性」についてお伺いしたいのですが、どうでしょう?

山田氏
たとえば、撮ってもらうときに私が求めたいものは、その時の私が生きているまんまを撮って欲しい。私にとってアーティストとしての時間って「生きる!」をそのまま体現しているつもりなので、自分の見えない魂の姿に出会えるっていうような、、、
割とそういうモノが自分にとっての写真だったりするので。
それこそ先日、西田さんに写真を撮っていただいた時もそうでしたけど、「何かを作った自分」というよりは、「そのままの自分を収めて欲しい」というのがあるので。
誰かに「自分が生きている瞬間」を見てもらうなら写真しかないかな?って。
映像で見るのとはまた違うと思うんですよね、、、その写真の表す世界というのは。映像って答えが出ちゃうでしょ。流れちゃうから。だけど自分がそのなんて言うか、、、命で吠えている瞬間を画で見てもらって、想像してもらってLiveに来てもらうんだとしたら写真は凄く必要だなぁって思う。

西田
アーティストさんの写真を撮らせてもらう時にいつも感じる事があって、例えばライブフォトの撮影の時って会場にお客さんがいる中で行われるんだけど、ステージいるアーティストさんのパフォーマンスも歌声も、メロディーも全てそのアーティストさん自身からオーディエンスに向かって放たれていると思うんだけれど、唯一写真だけそのアーティストさんが自分以外の誰かに委ねる事になるんだよな!って。そういう自覚をするととても神経を使うんですよね。こちら側も。
極端なことを言えば、写真家としての西田慎太郎とか関係ないな!って。
そのアーティストさんのファンだったり、これからファンになっていくかもしれないという広いゾーンのオーディエンスに向かって写真という媒体を用いてそのアーティストそのものを写し撮る!という作業に全ての神経を注いでいくっていうのかなぁ。
例えば、もの凄く綺麗なメロディーなんだけれど実はそこにはとてもしんどそうな言葉が歌詞として散りばめられていたりして、、、そんな部分にファンの方々はその人のアーティスト性を感じて感動したりするんじゃないか!?ってね。だから自分の心をカメラを向けるアーティストさんに寄せて行って、寄り添って、、、そういうったアーティストさんの心模様そのままを伝えられる写真を撮るんだ!って。
そう思うと担当するアーティストさんの最後のスタッフっていうかさ、そんな気持ちで撮影に臨むんですよね。

 

 

写真は受け手の想像力の余白に訴えかける為に凄く必要なモノ

山田氏
それはもう、今回の撮影の件も具体的に言えば西田さんじゃなかったら、、、西田さんだったからツアーファイナルの後に下関で1泊してまで撮ってもらおうって思ったんですよね。
知り合いの写真家は東京にも何人もいますけど、みんな出逢った時期がそれぞれ違っていて、、、
西田さんと出逢ったのはちょうど私がミュージシャンとしての活動のお休みから復帰したときだったかな、、、「こころ陽向」が出た時だったかな。僕の活動第2章というか、その時期を西田さんは知っていて。
私の曲を好きになって下さったって事もあるし、アー写(アーティスト写真)ってその誰に撮ってもらうか!?っていうのも必要要素のエッセンスとしてあるのかなって思いますよね。もちろんプロとしてもっと大きいところでやるようになっていけば、現場で初対面のカメラマンさんに撮ってもらうという事も多くなるとは思うけど。
より、こう今の状態で!写真一つで!魅力をバシっと伝えていかなきゃいけないって時にちゃんと気心知れているカメラマンさんの前で自分を出すっていうのは、やっぱり見ず知らずの人とやる時とは違うと思うので、私の心の根っこの部分が出せるかどうか?っていうのはそれまでの付き合いにもよると思うんですよね。
割とどこを撮って欲しい!ってのは意識としてはあるんですけど、今回のアー写は周りの人から見て私はどう見えるんだろう?というのをまず残して欲しいというのがあったので、そういった部分においては今回の写真が私は凄くお気に入りなんです。
写真は、そういう点でやっぱり誰に撮ってもらうのか?どういう間柄の人に撮ってもらうのか?って凄く大事だなって思いました。
アーティスト写真ってやっぱり見た人が興味を掻き立てられるモノであって欲しいんですよね。余白というか世界観を決め切らない部分があってもいいと思っていて、逆にその余白が出せるのが写真じゃないかなって。写っているモノに想像を掻き立てられるっていうか。画が動かない、音が聴こえないからこそ、見る人に委ねられるのが写真なので。

西田
そうですよね。

山田氏
「この人はどういう声なんだろう? どういうライブをするんだろう? この写真の表情の時はどんな歌を唄っているんだろう?」っていうようなモノが見る人の中で想像されるからこそ、魅力の種になりうるというか。
聴いてしまえば答えが出てしまうので、今ちょっと思ったのは写真は受け手の想像力の余白に訴えかける為に凄く必要なモノな気がします!
次号 対談後編へ続く

 

 

山田尚史 プロフィール
(やまだ たかふみ)

1983.05.10
神奈川県厚木市出身

喜びも悲しみも、笑顔も涙も。
心に湧き起こる感情をありのままに奏で唄う、魂のシンガーソングライター。

中学3年で初ライブを経験。高校時代からギターに触れ、16歳で路上ライブ活動を開始。2005年、テレビ番組出演がきっかけとなりCMタイアップが決定、2006年1月にインディーズ1stシングルを全国発売。翌年、メジャー流通でのデビューを叶える。

2016年、TM NETWORK木根尚登氏を総監修に迎え制作した1stフルアルバム「君を想う」を発売。アニメ「ラブライブ」等数々の作品に出演する声優・大橋歩夕のオリジナルアルバム「FAITH」に、同アルバム収録の「ソラドミソ」を提供。

2018年、石塚朱莉(ex.NMB48)プロデュース、劇団アカズノマ旗揚げ公演「露出狂」に参加、主題歌&劇中歌を制作。続くVol.2「夜曲-nocturne-」にもエンディング曲の作詞で参加している。

2018年12月には、役者としての初舞台を経験。2019年春に50周年を迎えた富士急ハイランドの記念テーマソングを歌唱しているほか、プラスサイズモデルとしても活動するなど、表現の幅を広げ続けている。

Official Twitter
https://twitter.com/yamadatakafumi

Official Site
http://www.yamadatakafumi.com/

(posted on 2023/6/20)

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