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日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム

Column

街歩き(34)トビリシ (ジョージア)

暫く滞在していたパリを離れ今回の街歩きは日本人には馴染みの薄いジョージアの首都トビリシに向かっている。
ジョージアは過去にはロシア語読みでグルジアの名で呼ばれ黒海とカスピ海に挟まれた面積的には北海道を少々下回る面積を有し、1991年までは旧ソ連邦の一角をなしていた小国だ。
ジョージアを語る上で外せないのが、世界で2番目に早くキリスト教を国教と認め、ワインに関しては8,000年前の遺跡から醸造所の遺稿が発見され現在では世界最古のワイン醸造国として広く知られている事だろう。
よって国民の宗教熱は高く、教会の多さに驚かされ、ワインに関しても良質の多種多様の品揃えを誇り外貨獲得の重要な資源の一つとなしている。

 さあトビリシに向かおう。
当然ながら日本からトビリシへの直行便は無く、我々は先ずトルコの首都イスタンブールへ向かいトビリシへの便に乗り換えた。イスタンブールからは黒海の南岸を東進する約2時間のフライトだ。
到着したのが深夜近くだったせいでもあり街全体が暗く、欧米系ホテルのネオンサインのみが不気味に輝いていた。
翌日早速街に出てみたが新市街は旧ソ連邦時代を彷彿させる味家の無い街並みが続いていたが、一端旧市街に足を踏み入れると想像していた以上に保存状態の良い街並みが現存し感動してしまった。現地で聞いた話によると5世紀から現在に至るまで約1,700年間首都であり続け、一国の首都で最も長い間遷都が無かった例は他に類を見ないらしい。

 トビリシとは暖かい土地を意味する語源からの命名らしい。そのせいか街のいたる処にハマムと称する地熱を利用した公衆温泉が多く見られ、温泉街と呼ばれる一角もある。
街を歩く人々はアジアとヨーロッパの十字路と呼ばれているだけあり、多人種の人達を多く見かけるが、特にアルゼバイジャン系、アルメニア系、ロシア系と近隣諸国の人達が多いらしく、国際色の豊かさは昔日を彷彿させられる。
その旧市街を一望出来る恰好な展望所がある。旧ナリカリ砦だ。ここから眺めるトビリシの街並みはマルコポーロが「絵のように美しい」と称えた旧市街、クラ川を眼下に望み、特に当時の様子を色濃く残している旧市街には多くの歴史的教会群が美しく際立っている。

 トビリシには数日間滞在しその後は五千メートル級のコーカサスの山塊がそびえる集落の撮影に向かったが、トビリシに滞在中は近郊の多くのグルジア正教の教会を訪れ、今ではロシアが実効支配をいているエリアの教会にも足を向けた事が思い出される。特に5世紀までの首都があったムツヘタの旧市街、現存する三つの教会は共にジョージア最初の世界遺産にも指定されている。

 日本からのアクセスの利便性を考慮すれば気軽にお薦めは出来ないが、近隣諸国からのアクセスには問題は無い様なので、我々のようにトルコからも2時間も有ればトビリシに着く航空路も有り、一見に値する国である事には間違い無い。

 さてこの後は黒海に面した港町バトゥミに向かい次は何処の街歩きを楽しもうか。

(posted on 2023/4/13)

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