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日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム

Column

NO PHOTO NO LIFE ㉞ 対談企画
ゲスト ピアノ弾き語りシンガーソングライター 工藤江里菜さん
~約10年ぶりの再会、そして宣材撮影からの新たなご縁~

昨年の秋、約10年ぶりの再会を宣材撮影という形で迎える事が出来た事を心から感謝している。
再会のお相手は神奈川県の湘南地区をホームに活躍するピアノ弾き語りシンガーソングライターの工藤江里菜さん。トレードマークともいえるボブヘアーは約10年ぶりの再会にも健在で、僕がお会いしていなかったこの約10年の間に結婚、出産というライフイベントを経験した彼女は、新たな魅力を纏いつつ、今年迎える活動20周年を前に生き生きとした姿を見せてくれた。

西田
本日は宜しくお願いします。
撮影した10月から早いもので年も変わって、僕にとっては今年最初のコラムになりますんでね!2023年の初号が江里菜ちゃんにゲストとしてお越し頂けて大変嬉しく思っています。

工藤江里菜
よろしくお願いします♬

西田
それでは対談企画なので早速質問をぶつけていきますので、ざっくばらんにお答え頂ければと思います。これまでも当コラムでは僕がお仕事でご一緒させて頂いた色々なアーティストさんにお越し頂いているのですが、まずアーティストさんをゲストにお迎えする時に決まってお聞きする質問がありまして、プライベートの江里菜ちゃんではなく「アーティスト工藤江里菜」さんにとって写真とは何なのでしょう?そういった切り口からいつも対談をスタートさせます。

工藤江里菜
あ~、写真とは!?、、、かぁ~。

西田
漠然とした質問で返答が難しいかもしれませんが、仮にこの質問が僕以外のメディアからの質問だとした場合にどのような答えが返ってくるのかとても興味がありまして。
当然、昨年の秋に江里菜ちゃんの宣材写真を撮影させて頂いたのでその部分もこの質問の大きな動機となっています(笑)

工藤江里菜
う~ん、写真、、、
そうですねぇ、私、音楽もそうなんですけど例えばその時の表情とか自分のちょっとした気持ちの揺れというか、、、
本当に表情って変わるじゃないですか!?だからその時の空気感とか、そういうモノが写真というフィルターを通して自分以外の誰かに届くのかなぁって思うんですよね。うまく言えないんですけど、「その時!」「その今!」生きている、そして歌っている証明というか覚悟というか、、、
写真って最初のうちは撮られ慣れてなくて、なんだかこう、、、
最初、わたし本名以外のアーティスト名で音楽活動をしていたんです。
自分自身が出ていく恐怖っていうのがあって。それで名前を本名じゃないアーティスト名にしていたんですけど、それでこう、何か自分を隠す!みたいなのが昔はあって。
それが段々とダメなところも上手くできないところも、そして上手く出来過ぎちゃうところも全部さらけ出しちゃえばいんだ!それが私なんだから!そういう風に思えるようになってから写真を撮られるのが好きになって。
私も今まで色々な方に沢山の写真を撮って頂いてきたのですが、例えば体調不良でメチャクチャ熱があった時に、「でも撮影は今日しかない!」みたいなときって、当然その事を撮影に臨む自分は隠そうとするじゃないですか。
でもそうやって一生懸命笑おうと努力してその時に撮られた写真の中から、見てくれた方が「元気をもらえたよ」とか言って頂けると、「あ~、あの時一生懸命やって良かったな!」って思えるし。私自身が活動していく上での「アーティスト工藤江里菜」としての証明として、「その時その瞬間」を切り取ってもらうモノですかね。私にとっての写真って。

西田
こういう質問受けたのは初めて?(笑)

工藤江里菜
「写真」って言われたのは初めてですよね!
大体、「音楽とは?」と聞かれることは多々あるんですけど、「写真とは?」と聞かれたのは初めてかもしれないですね(笑)

西田
でも、江里菜ちゃんの写真が存在しない江里菜ちゃんの作品や商品って、それこそ存在しなかったんじゃないのかな!って僕は思うんだよね。リリースされたアルバムに1枚も江里菜ちゃんの写真が無いものなんて無かったでしょ!だとしたら、これまでのアーティスト生活の中で切っても切り離せないモノとして写真という存在はあったんじゃないのかな?って思うの。でも意外と「シンガーソングライターの工藤江里菜」さんに対して「写真とはなんぞや?」って質問する人はいないだろうな!と思って(笑)

工藤江里菜
曲によって「世界観を表現する」って言うのは、その音楽+αの部分ってあるじゃないですか!受け手の方々がアルバムのジャケットを見てそのアーティストの世界観に入ってくる部分があったりもするし、だから写真というモノを大切にはしてきたんですけど。
でも、その中で「写真って難しいな!」って事もあったし。

西田
はいはい。いいねぇ。是非お聞かせ願いたいね。
そのアーティストとして「写真って難しいなぁ!」って率直に感じた部分があるって凄い興味深いところなんですよね。撮り手としては。
それは、何か自分が表現する時にその(写真の)選択を一歩間違えてしまったら自分が伝えようとしているモノと違う方向に向かってしまいそうとか、そういう危機感を含んでいるからなのだと思うんだけどね。

工藤江里菜
そうそう。撮影する場所だとか、着る服一つでも変わるじゃないですか。で、表情一つでも。
ただ、その表情って凄く難しくて、なんかその所謂女優さんのように簡単にはいかない訳ですよ(笑)だけど自分の中に世界観はしっかりと持っていたりするので、ロケ現場とか自分でいつも調べるんですけど、自分の中で「こういう風にしたいな!」っていう想いと、そこのイメージに辿り着くのがなかなか難しい部分と、、、
あと「女性アーティストあるある」かもしれないですけど、例えば笑った顔のジャケ写の方がセールスが伸びるというか、皆さん笑顔がジャケ写になっているCDの方を手に取って下さることがやっぱり多いんですよ!

西田
へぇー!

工藤江里菜
ただ、やっぱり私自身は作品によって色々なバリエーションが欲しいし、その中でキラリと輝くモノ!
その笑顔だけではなく、、、まぁ、それも結局は空気感だと思うんですけど。
その見た瞬間に引き込まれるようなモノをこれからもモットモット自分自身の表情なども含めて追及していきたいし、それを考えるとワクワクしますよね♬

西田
それでは次の質問は、その「カメラマンと仕事をします!」ってなった時の話で、江里菜ちゃんはアーティストだから自分の作品のイメージが自分の脳内にあるわけですよね。

工藤江里菜
うんうん。

西田
それを表現していくのは大半は江里菜ちゃん自身の音楽で表現していくのだろうけど、既存のファンの方々を含め、オーディエンスの中から新たなファンの獲得の為に間口を広げる意味でも「音を聞く手前の段階」でのビジュアル戦略の一環として写真だったりイラストだったりを使用する事になるわけですよね。CDのジャケット用だとかポスターだとか。そうなった時に担当するカメラマンとクリエイティブな作業を進めていく上で自分の世界観を相手のカメラマンに共有してもらう時には、どういった手段を使ってそのクリエイター達と意思疎通を深めていくのかな?って。カメラマンだけじゃなく周囲のクリエイター達と主にどういった方法で伝えるのかな?って。率直に言葉で伝えるの?

工藤江里菜
言葉とか下手でも絵とか。

西田
へぇ~(笑)
面白い!

工藤江里菜
「こんなイメージなんです!」って絵を描いたり、参考になりそうな資料を一生懸命探したり、あとは割と音楽でもそうなんですけど、勿論最初の自分のイメージはあるんですけど、撮影であれば写真を撮って下さるカメラマンさんと生まれるその瞬間の奇蹟ってあるじゃないですか!なんかそいういうモノって凄く大事にしていて、それは音楽でも。
「ここにこれを入れる予定じゃなかったんだけど、だけど何かㇷと違うモノが入ってきた時にガラっと雰囲気が変わったりして、自分の中で変化が起こるという事があるんですよね。写真もそうなのかなって。予定された始まりがあっても、撮っていくうちにまた新しいモノが生まれたり。だから逆にアイデアは出して欲しいタイプですね。

西田
じゃあ、偶然の産物は自分の感性に引っかかったら取り入れていく方なんですね。

工藤江里菜
割とそうですね。
なんかそれも含めて周囲のアーティストやクリエイターの方々とのご縁だと思っていて、自分の中に無いものが混ざると、その分世界が広がるじゃないですか!
なので、「それはいいかも!」って思った時はそのひらめきを優先したり、でも頑固に「これはこうだ!」っていう時もあるけれど(笑)

西田
では撮影しているときに、カメラマンに求めたい気遣いってなんでしょう?

工藤江里菜
私は要望は多くないと思うんですけど、そのカメラマンさんがたとえよく喋るカメラマンさんでなかったとしても楽しそうだったらテンションあがりますよね♬
「なんかこのカメラマンさん、めちゃワクワクして撮ってくださってるな!」って。そういう時って私も楽しいし。
私、カメラマンさんの表情とか実はけっこう見ちゃうんですけど、言葉数が少なくても何かその楽しそうで生き生きとしている感じが、そのビビビ!ってくる瞬間がいいですよね。
その瞬間って撮影してもらってて凄く心地いいですよ!だからやっぱりそこも空気感!
逆に西田さんが「アーティストさんを撮る」ってなった時にまずその方を調べたりするんですか?

西田
まず、やっぱり作品に触れるよね。
アーティストさんを撮るってなったら僕の中では絶対外せない事だよね。
お仕事でご一緒する全てのアーティストさんの全ての作品を購入するっていう事は、職業柄際限のない事になってしまうので難しいんだけど、購入できなくても集められるだけの資料を基に作品に触れたり、あとは今はSNSが発達していて作品だけじゃなく映像で触れることができる機会が増えたからどんなファッションを日頃しているんだろう?とか、どんな雰囲気が好みなんだろうとか、そんな事を自分なりに推測や想定して、アーティストさんとのセッションに控えてるよね。

僕らって僕ら自身のマインドを前面に出して表現する職業じゃないと思うんだよね。
あくまでも被写体が持つマインドや魅力を出来る限り歪めることなく、より多くの人に伝わりやすくする為のお手伝い!っていう位置づけの職業だと思ってるからね。
だからアーティストさんを撮影する時は、そのアーティストさんが何を伝えようとしてアーティスト活動を行っているのか?とか、そういう理解をできるだけ深めてから撮影に臨むっていう事は大切にしているかな。なので「人として!」は基本なんだけれどもアーティストとしてリスペクトして向き合ってますよ。この人はどういう事を唄っているのだろう?とかね。

工藤江里菜
そうですよね。歌詞の世界観とかですよね。

西田
そうそう、やっぱり歌詞は曲に比べるとよりダイレクトメッセージとして受け取りやすいから、そこは本当に注意してそのアーティストさんへの理解が深まるように作品に触れるよね。

工藤江里菜
今年は活動20周年の年で色々と頑張っていこうと思ってるんですけど、これまでは「聴いて頂く方に対して」というか、私ってショッピングモールさんでのライブとかがとても多かったので聴いて下さるお客さんに向けて、その「笑顔になってくれたらいいな」とか、「一瞬の癒しになってくれたらいいな」とかあったんですけど、でも最近になって20周年という節目に立ってみて「これまで自分をさらけ出すのが怖かった20年だったな!」っていうのが自分の中にやっぱりあって、振り返ってみると「やっぱり可愛く見られたいんだな、この表情」っとか、、、
もっとがっついてコンプレックスも出しちゃえばいいじゃん!って。これ、音楽もそうだと思っていて「全部を小奇麗にまとめなくてもいいじゃん!」って。
もっと人間「工藤江里菜」が垣間見れてもいいのかな?って。ダメなところも含めての「工藤江里菜」そういうことを音楽でも感じ始めていて。
音楽を作る時って、とても苦しい時もあるんだけど、でも結局その苦しんでいる自分を癒してくれるのも音楽なんですよね。いつも。
だからこの際もう、一回開放して、たとえ自分の身体から出るモノがいつも笑ってなくてもいいしって。最近やっとそんな風に思えるようになって。

うーン、
だから前回西田さんに撮ってもらった写真!ちょっと表情がアンニュイなモノとか今までの私だったら隠したい部分だったかもしれない!って思うんですよね。笑ってない表情の自分にコンプレックスがあったので。笑わないって事が怖くて。
だけど、その、「いいじゃん!」って思ったんですよ。凄く。
西田さんが撮ってくれた写真を見て。「あ!もっと肩の力を抜いてみてもいいだ!」って。
その先に「もっと自由に生まれる新たな自分の音楽がまたあるのかな」って思ったりして。

西田
江里菜ちゃんって確かにスマイリーなイメージがあるけど、でも、そのスマイリーな中に時折シャープな表情を見せる時があるでしょ?それって何となく気付いている人って実は多いんじゃないかなって。潜在的であっても。
ファンの皆さんもご自身ではその事に自覚は無いのかもしれないけれど、みんなを元気に導こうとステージ上でありったけのスマイルでいる江里菜ちゃんが時折見せるアンニュイだったり、焦燥だったり、虚ろだったり。そんな喜怒哀楽の笑顔以外の江里菜ちゃんとの
ギャップが、そのスマイリーな江里菜ちゃんをより際立たせているんじゃないかなって僕は思うんだよね。だから10月の撮影で僕はアンニュイだったり、切ない表情の江里菜ちゃんであっても躊躇わずにシャッターを切った(笑)

工藤江里菜
いや~だから写真だけは自分だけで選ばないようにしてるんですよね(笑)
めちゃ偏るんで。

西田
先ほどお話にも出たけれど、今年はアーティスト活動20周年ですよね。
僕も10周年の時のホールコンサートにお客さんとして観に行かせてもらったのだけれどあれから10年!また大きな節目の年です。
この秋に向かって20周年のイベントが沢山立ち上がってくると思いますが、意気込みのほどは?(笑)

工藤江里菜
テンション的には「いってやるぞ!」って思いと「ちょっと怖いな!」って思いも実は少しあったりして。そう思いつつも「もう公言してしまった!」みたいな(笑)

でも、今まで自分の決めた事を「やらなきゃよかったな」と思った事とか上手くいかなかった事とかなかったしな!って。やり遂げてきたんです♬。
だから、この20周年はお世話になった色々な方々に、応援して下さる全ての皆さんに感謝の想いを伝えられる20周年にしたいなって思います。

西田
流石20年ステージに立ってきた人だね!
まとめるの凄い上手(笑)
年も無事に明けたし、秋の20周年ツアーファイナルに向けてあっという間の毎日が始まりますよ。

工藤江里菜
そうですね!
一応今回、東京、名古屋公演、できれば札幌も!そしてホームの湘南地区と、いまブッキング調整中です。あと新曲も!頑張ろうと思ってます。

西田
昨年の撮影を機に話に上がった20周年に関連した素敵な企画、是非実現していきましょう!素敵なアニバーサリー・イヤーになる事、心から応援しています。本日はありがとうございました。

工藤江里菜(エリボン) プロフィール
Official ブログ 工藤江里菜の笑ってシマウマ♪
https://ameblo.jp/erinakudou/

エレクトーン全国大会優勝の高い芸術性のキーボード演奏と共に
透明感のある歌声、親しみやすいキャラクターで
ファンを魅了している北海道札幌市出身のシンガーソングライター。
「湘南の歌姫」と称され、2015年には藤沢警察一日署長を、同年11月には藤沢一日消防長を務める。
シンガーソングライターの傍らピアニスト、アレンジャーとしても活躍。
イメージソング制作、ドラマ、ミュージカルの音楽なども担当。
YouTubeでのオリジナル&カバー曲の総再生回数は100万回以上。
2020年には第二子を出産し更にパワーアップ!
日本のスタンダードを目指し世界に向けて活動中!

(posted on 2023/1/20)

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