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日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム

Column

街歩き(32) パリ4区、11区、12区 (フランス)

 またまた映画の話からで恐縮だが「パリ・ジュテーム」という映画がある。2006年のフランス映画で20区あるパリの町のうちの18区を舞台にし「愛」をテーマにした18編の短編オムニバス映画だ。
世界中の18人の監督が映像にて「愛」を表現し持ち時間が1区につき5分程度と極端に短いため各監督の腕の見せ所と言った処かも知れない。
私的には18区モンマルトル、5区セーヌ河岸、それに12区バスティーユが好みだが今回の町歩きはそのバスティーユに来ている。
ミランダ・リチャードソン(赤いマントの女) とセルジョ・カステッリット(その夫) 扮する熟年夫婦のいささか面倒な離婚話しの展開をユーモラスに描いた秀作であり、話の舞台として設定されているのがバスティーユ界隈のブラッセリーとなっている。

 そのバスティーユ広場は4区、11区、12区に面し、エトワール広場と並ぶパリで歴史的に見ても最も有名な広場の一つかもしれない。
もともとは有名なバスティーユ牢獄があった場所で、1759年7月のフランス革命の発端となったバスティーユ襲撃の舞台の牢獄が置かれていた。事件後は牢獄自体が解体され、現在は広場の中心に1830年の7月革命で犠牲になった市民を追悼する7月革命記念柱が建っている。
その一角の牢獄の跡地にはその後SNCFの駅舎が建っていたが、やはり以前から述べていたグランプロジェの一環として広場の再整備が行なわれ、先ずは駅舎を廃しその跡地に新しいオペラ・バスティーユが建設された。

 さてそのオペラ・バスティーユだが1983年に国際コンペによりデザイン案が公募され、47カ国約1700人の建築家の中からカナダ人建築家カルロス・オットーの案が採用され1989年に竣工した。
外観のデザインは、100年前に建てられ9区のシンボル的建築のオペラ座パレ・ガルニエとは対照的なガラス張りの超モダニズム建築で、歴史的な広場に新しい息吹を吹き込む前衛的な建築となっている。
内部は地上7階、地下6階の構成からなり2700名の収容能力を誇る。
今ではパレ・ガルニエと双方でオペラ、バレー、管弦楽等のコンサートが開催され労働者が多く居住する東部地区の新しい文化の発信地として多くの人で賑わっている。
設計者のカルロス・オットー自身もバスティーユ・オペラを大衆化し、オペラ、バレーを庶民にでも気軽に楽しめる大衆化を目指したと言われている。彼の目論み通り多くの人々が楽しめるようになってきたのは確かなようだ。

 そんな事が相乗効果となりこのエリアはパリの最先端をいく地区の一つとして大変貌を遂げ、特記したいのは廃線となった高架鉄道の跡を再利用したヴィアディック・バザールでは家具ショップ、アートギャラリー等が軒を連ね、高架橋の2階のレールが敷かれていた屋外は緑の多い遊歩道となり、所々に設けられた階段やエレベーターで上がることが出来る。
旧高架橋だけに高さも結構ありこの界隈の町並みを俯瞰するのには恰好の散歩道となっている。
又広場の北東部のロケット地区界隈、ラップ通り辺りも新しいカフェ、バー等も多くあり、最近は人の流れがパリの町の東部の方へ変化してきているようだ。

さてさてパリの町歩来も少々飽きてきたようなので次回はパリの町歩きも最後として、新しい国、新しい町に向かうことにしよう。

(posted on 2023/1/5)

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