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日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム

Column

NO PHOTO NO LIFE㉜〜飲食店における広告写真の必要性〜
対談企画 味の古久家 代表社員 小林剛輔様

前書き

今年の6月
古いご縁を辿ることによって神奈川県は藤沢市のソウルフード企業として地域に愛されている「味の古久家」様からグループ全体の店舗外観写真のお仕事をいただいた。
そこが起点となり、「味の古久家」様がセカンドブランドとして運営するラーメンチェーン業態の「寅そば」さんの初のウェブCM制作が発案され、シンガーソングライターの「落合みつを」さんを企画にお招きするなど当初の計画には無かった広がりを見せた。
6月からプロジェクトが開始となりイメージソングを担当して頂いた「落合みつを」さんのアーティスト写真撮影などもCM制作プロジェクトと並行して行われ、10月には「寅そば」さん初のWEB CM公開へと繋がった。

今回はそんなの自社の牽引のみならず、地域活性イベントなどでも成功事例の実績を持つ藤沢飲食業界で顔役の一人である小林剛輔様をゲストにお招きして飲食店における広告写真の必要性などに関してお話を伺いました。

西田
6月から準備にとりかかり10月から公開された「寅そば」さんのウェブCMではお世話になりました。
今回、その「寅そば」さんのCMでイメージソングを担当してくださった前号ゲストのシンガーソングライター「落合みつを」さんからバトンを引き継ぐ形での対談企画になりますので宜しくお願いします。

小林代表
よろしく~。

西田
建築写真の専門家が在籍するサイトなので写真をテーマにした話をお伺いしたいのですが、10年来のお付き合いをさせて頂いている中で初めての質問ですが、小林代表にとってズバリ写真ってどんな存在なのでしょう?

小林代表
写真?どうだろうな~
割とね、小さい頃から写真は撮ってて、カメラは持ってたんだ。

西田
それは撮られる方ですか?それとも自分が撮る方ですか?

小林代表
自分が撮る方ね。
景色だったりとか、旅行が好きだったから。
旅行に行くと基本一人だから、自分が写ってない写真がほとんど。(笑)
小さい頃から撮ってた。

西田
カメラって、代表が小さい頃から自分用のマイカメラが手元にあったんですか?

小林代表
小学校の時には持ってたかな。

西田
そうなんですね。代表が小さい頃って言うと、それは当然フィルムの時代ですか?

小林代表
そうそう、フィルムカメラ。
えっとそれもね、凄い古いの!!
祖父が使ってたやつを「もう使わないから!」って棄てちゃうようなやつをもらって使ってた。普通の35ミリフィルムのカメラ。 ただ、あの自動巻きみたいな機能もなかったし。

西田
手巻きの?

小林代表
そうそう。 そんなカメラを初めてもらってそれを使ってた。
勿論オートフォーカスも無いし。
だからピンボケ写真ばっかり撮ってた(笑) 知識もないしね。

西田
それは記録という意味合いが多い写真だったのか?それともご自身の中では大人目線で見たときに芸術性の意味合いの方が割合として多かったのか?
どちら寄りのお写真だったのでしょう?

小林代表
記録じゃないんだけど、でも記録に近いのかなぁ?
なんかその場で見て思ったことを切り取ってる感じなのかな。
「これ綺麗」とか 「あ、これ面白い!」とかっていうのを。
「残したい」というよりは、「面白いから撮ってみる」っていうような感じに近いのかな?

西田
なんかちょっとお写真見てみたいですよね。
何故かというと、今までお付き合いさせて頂いた中で小林代表って、とても効率的だったり、なんて言うのかな?その費用対効果を最大限に発揮させるようなモノを作り出したりする事に非常に長けている方というイメージがあるので、芸術って言ってしまえば直接利益を生むところから考えると、とても無駄が多かったり、利益性からするとどうでも良かったりするような部分につくり手の拘りがあったりするじゃないですか。
そういう感性寄りの写真などを小林代表が撮られている姿って僕の中では、これまであまりイメージが無かったんですよね。
これはある意味、僕の偏見かもしれませんが「味の古久家」のトップである小林代表に対する街の人の印象って頭脳明晰でなんかこう、「無駄なことは省いて!」って、、、
これやっぱり僕の偏見ですかねぇ(笑)

小林代表
あはは (笑)
基本的にはねぇ、自分は無駄の塊だと思ってるから。

西田
意外でしたが夜通しゲームに時間を費やされるような事もあるって仰ってましたよね(笑)

小林代表
無駄の塊だし、感性の塊だと思ってるし。
あ!あと一番大きいところは多分、好奇心の塊なんだと思うんだ。
だから無駄を山ほど集めておいて、集まった無駄を表向きには上手に組み合わせることで費用対効果を生むような事ができるんだと思うのね。だからそのベースの部分の無駄集め!
一人旅なんかも究極の無駄じゃない。私生活にとっては究極の無駄だから、そういう無駄集めの一環として写真も撮ってたのかもしれない。面白いと思うところを撮って集めておいてね。

西田
めっちゃガッテンしました。
だから僕のような人間ともお付き合いしていただけるんだ!(笑)

小林代表
無駄の塊!笑っ
面白いって思えば何でもできるっていう感じなんじゃないかなぁ。
多分写真なんかも最初に要らないカメラをもらって好き勝手に撮ってみて36枚フィルムの現像をしてみたら1枚もプリントできるモノがなかったりとかさ(笑)
そんなこともあったり。
これも多分、逆に最初にそのカメラの撮り方を教わったり、フォームがなんちゃらとかっていうふうになったりしたら「もういいや!」ってなってたと思う。
だからね、カメラいじってんのが楽しかったのかな?
単純にいいな!と思うのを撮ってて、それで現像してみたら、たまに良いのがあったりとかさ。 そういうのも楽しかったんだと思うんだけど。

西田
そのような少年期を経て今に至っているのだと思うのですが、最近でカメラのシャッターを切られたことはあるんですか?

小林代表
最近ではね、カメラは無いな。
でもスマホではちょこちょこって言うか、ほぼ毎日写真は何かしら撮ってるかな?
見つけた面白いモノ撮るし。

西田
そこ(面白いモノ)が、やっぱベースなんですね。ご自身の気持ちに響いた面白いモノが。

小林代表
うん。面白いにも2種類あって単純に自分で面白いっていうのと、これを誰々に見せたら面白いとか。
例えばfacebookで「藤沢好きな人たち」にこの写真見せたらきっと喜ぶぞ!って思うモノを撮ったりとか、逆に喜ぶじゃないけど、これ絶対知らないだろう!って思うモノを見つけたら撮ってみるとか、そんな感じ。
犬の散歩しながらでも写真撮ってるし。 犬の写真よりかは、なんか道端の草花の写真とか、景色を撮ってる方が多いかもしれない。

西田
なるほどですね。小林代表のフェイスブックでの日々の写真はそうやって成り立ってるわけですね。(笑)
わかりました。ありがとうございます。
いま小林代表個人における写真との繋がりはご紹介いただいたのですが次の質問として、そんな小林代表は一つの会社の先頭に立たれて事業をされてるじゃないですか。今度はその「会社」というものにとって、写真が持つ意味合いってどのようにお考えなのかなと。
勿論、広告写真だと思うんですけど、その広告写真というものにコストを投じてでもやる必要がある理由ってどのような理由があるのかな?って。
経営者の方がコマーシャルを必要と考える理由って、例えばそれが写真であっても映像であってもどんな理由を挙げられるのか僕ら外注側の立場からすると、とても知りたい部分でして。
例えば「新しく開業しました!」っていう時であれば分かりやすいじゃないですか。
まあ、多くの人に知ってもらう為という大義があるので。
でも藤沢のソウルフードの代名詞として名前の上がる「味の古久家」さんのような会社がCM打つ意味となると強い動機はどこなんだろう?って。
今回は「寅そば」さんの初のウェブCM制作という企画でシンガーソングライターの落合みつをさんの協力も得てご一緒させて頂いたのですが、自分が小林代表の立場だったらCMを打つ必要性ってどこなんだろう?って考えたら凄く難しかったんですよね。 その地域にこれだけ根付いていて、言い方を変えると知らない人がいないような会社さんがCMを打つ理由ってあるのかなと思って。
そこが分かったら僕達にとっては凄いヒントだと思うんですよ。老舗の会社さんが宣材写真や映像を必要とするタイミングってどこなのかなと思って。

小林代表
うんうん。 いくつかあって。
一つは、例えば「お昼ご飯を食べよう」って思った時に 何個か頭に浮かぶわけだよね。「何食べよう」って。「何処どこの店で食べよう」って。

西田
はいはい、なるほど!

小林代表
だいたいそれ何個浮かぶ?

西田
でも、まあパッと浮かぶって言ったら? 僕の場合は3、4件かもしれないです。

小林代表
一般的にやっぱりね、多くて5件なんだって。
その5件に入ってるお店ってどういうお店かっていうと? すごく美味しいお店なのか、それともなんかいい接客だったのかと色々考えていくと、実はそういうのはあんまり関係なくて、人間単純に最近情報が入ってきたお店なんだよね。
凄い美味しかったお店でもさ、ぱっと出てこないじゃん。
よく考えれば、そういえばあそこにも美味い店あったよな!って。
で、お客さんて「あのよく行ってたお店に行かなくなる理由」のナンバーワンが、「なんとなく!」なんだよね。言われてみれば「あそこ最近行ってないじゃん」とかっていうふうに。
だから、その5件に常に入っている為には、常に思い出し続けてもらう事が必要。
そういうために広告とか、CMとかを打つってのがあるのね。それでさ、凄い成功した事例でよく出てくるのが某飲料メーカーで。だから赤いものを見るとパッとその飲料メーカの代表商品を連想できるぐらいその商品は赤と白っていうイメージを定着させたの。
思い出してもらえる簡単な状況、赤と白なんか街の中にいくらでもあるじゃん? 同じように某ファストフードのあのお店は赤に黄色!(笑)

西田
はいはい、なるほど!(笑)

小林代表
そういう風に思い出してもらうきっかけを町の中にいっぱいちりばめてやってるのと、まあCMだったりSNSで定期的に思い出させると。無理やり(笑)
実務的にはそういった意味合いがあるから、うちでもやっぱり「じゃあ、何か食べよう!」って時に思い出してもらえるかどうか?というのと「みんなが知ってる」っていうのは、また別の話なんで。
よっぽどコアなファンのお客さんだったりすると、必ずうちをその選択肢の中に入れてくれたりもするけど、一般の大多数のお客さんはそういうわけがないので、時々思い出してもらうために強制的に情報を送る!という感じ(笑)

西田
なるほど。消費者側の記憶のブラッシュ、アップを継続した方が来店動機につながりやすいということなんですね?

小林代表
うん。
あとはね、常連さんとか、まあ割とよく来てくれるお客さんが例えばCMとかテレビとかに出てるとみんな喜んでくれるんですよ。
「俺の知ってる店テレビ出てるぜ!」っていう感覚。 それがネットでCMやってるんだ!とかさ。 そういうので顧客サービスの一つだったり。
あとは従業員が満足度じゃないけどさぁ、みんなが知ってるお店で働いてるとか、あのテレビでCMやってる!ネットでCM出てる!そんなお店で働いてるとかっていうのって、喜びに繋がるっていう。
だいたいその二面かな? 大きなところでは。
そういう部分でやっぱり映像があると効果としては大きいということで、新商品を知らせるフックにも勿論重要だけど、思い出してもらうためのフックの道具として言葉もコピーも大事だけど、やっぱり映像の方がより伝わりやすいって言われてるんでその辺かな。

西田
ありがとうございます。
うん、なんか今の話を「、、じゃないだろうか?」って憶測で話せる人は沢山いると思うんですけど、実際に飲食チェーンのトップに立たれている人の言葉としては、直接伺った事がなかったので、そういう解釈でいいんだ!っていうか、そういうところで自分たちも仕事を探していけるチャンスってあるのかなっていうのは今思ったのでとても勉強になりました。
では最後の質問が今の質問と近いかもしれないんですけど、今回その初のWEB CMを作ってみようという企画でご一緒させていただいた中で実際に完成を経て公開して世間に流れてみての率直なご感想をお伺いしたいなって。

小林代表
なんか欲を言えば動画の間に商品とか食べてるお客さんの画像とかが差し込まれてるとより面白いのかなって。今回わりと前半は綺麗に作ってて後半に情報をかためた感じだったからあれを分解して途中に落合さんの歌ってる画像が入るとか、情報としての差し込みが入るとか。
そんな感じでいくと最後まで観てもらいやすいというか、中にはエンドロールっぽいな!って感じたら見るのをやめちゃう人もいるのかなっていう風にも感じたんで、そういうふうにしても面白かったかなって。

西田
僕も写真の枠を超えてWEB CMという部分の大半に携わらせて頂くというのも初の経験だったので、これちょっと第二弾をやりたいと思ってるんですよね。広告制作の面白さを今回とても実感したので、次回は一般CM規格の15秒とか30秒で制作したいなって。

小林代表
欲言ったら、それせっかくだったらYouTube広告に使える尺に合わせて作ったら!
短いのでいくつだっけな? 30秒から1分だっけ?ちょっと確認しなきゃいけないけど。

西田
あー、それいいアイデアですね!
2023年はその企画で是非またご一緒させてください!
それにしても、今回の藤沢遠征で久々に食べることが出来た「寅そば」さんのラーメンと定食のセット、やっぱりめちゃ美味しかったです。替え玉しておけばよかった!(笑)
小林代表、どうもありがとう御座いました!

寅そば 初のWEB CM
https://youtu.be/jvurcFKyWtU

味の古久家
古久家ブランドとして今年75周年を迎える神奈川県藤沢市で町中華を主とした飲食店を展開する老舗企業。世代を超えたファンを多く抱えメディアにも度々取り上げられる藤沢のソウルフード企業。

公式サイト “創業昭和22年 藤沢の街中華 – kokuya ページ!”
https://kokuya.jimdo.com

(posted on 2022/11/20)

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