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日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

設立25周年企画展
25th anniversary exhibition

コラム

Column

街歩き(30) パリ1区 (フランス)

 東京は23の区政をしいているが、パリも20の区政をしいている事を知る人は少ない。説明をすればパリ発祥の地シテ島の西半分とルーブル美術館辺りを1区とし、時計回りの渦巻き状に20区までの区が配置されている。この渦巻きの形状からパリの町はエスカルゴと形容されている。セーヌ川が町の中心部を東西に流れ、北側を右岸、南側を左岸と呼ぶ。(2020年4月からは1区~4区が統合され呼称がパリの中央を意味する「パリ・サントル Paris Centre」になった)
ちなみにルーブル美術館は右岸1区、エッフエル塔は左岸7区、エトワールの凱旋門は右岸8区、モンマルトルは右岸の北の端18区に属する。

 今回の街歩きは町の中心パリ1区にあるチュイルリー公園に来ている。ここはパリ最古の公園で、東はルーブル美術館、カルーゼル凱旋門、西はコンコルド広場、シャンゼリゼ通り、南はセーヌ川、北はリヴォリ通りに面し、名前は昔に瓦(チュイール)工場がこの地にありそれに由来があるらしい。元々は同名の宮殿が建っていたがパリコミューン時に消失し廃墟後に倒壊し、その跡地に現在の形に公園として新たに整備された。設計者はヴェルサイユ宮殿の庭園設計で有名なル・ノートル。典型的なフランス式庭園で東西に一本の大きな遊歩道を設け完全な左右対称の形態を成している。園内にはマイヨール、ロダン等の彫刻が配され、西端にはモネの大作で知られるオランジュリー美術館等の複数の美術施設を配し芸術と美術が一体化した屋外美術館と言っても過言ではない。
又、夏のバカンス時やクリスマス期間には園内に移動遊園地が仮設され、大きな観覧車がお目見えする。この観覧車がなかなか優れもので高さにして約50メートルはあろうかと思う程の強大さだ。1区辺りには高い建物もなくこの観覧車に乗ればパリの一大パノラマが楽しめる。特に興味を引かれるのは西にグランアルシュ、エトワール凱旋門、コンコルド広場、オリベスク、チュイルリー公園が一直線並び、それに続くルーブル美術館がわずかに(角度にして3度らしい) 振れているのが目認できる。

 少し公園内を散策しよう。歩いてみての実感として、この公園はパリでもっとも人気の高い公園の一つで、場所柄観光客も多く季節に関わらずいつ行っても多くの人達が思い思いのスタイルでの公園ライフを楽しんでいる。
私自身も幾度となくサンドイッチや近隣の店のテイクアウト弁当、コーヒーを持参し行き交う人々を眺めながらのランチタイムを満喫したことが思い出されるが、一転冬になると行き交う人も少なくなり特に冬枯れの季節のはりつめた寒気の中の早朝散歩はお薦めしたい。

 余談を少々挟むがパリの凱旋門と言えばエトワールの凱旋門をさす。世界で最も知られた凱旋門でシャンゼリゼ通りの西端にナポレオンの戦勝記念として建設されたパリのシンポル的な建築だ。チュイルリー公園からも西方向を眺めると約2km先に眺める事が出来るはずだ。そこから東にルーブル美術館の方に目を移せばやや小ぶりの凱旋門を目にすることが出来る。カルーゼルの凱旋門だ。この凱旋門もナポレオンの戦勝記念として建設されが、彼自身がこの凱旋門が期待に外れで余りにも小ぶりだったことに不満を抱き、さらに大きな凱旋門の建設を命じ,先に述べた高さ50mの新しい凱旋門の建設に至ったらしい。ちなみにこちらの凱旋門の高さは19mであるが、ピンクと白の大理石を基調にした外観には優美さが感じられる。

 余談の後は敷地内のオランジュリー美術館に向かおう。
この美術館を訪れる多くの来館者の目的はモネの大作「睡蓮」だろう。もともとはチュイルリー宮殿のオレンジ栽培の温室だったが1927年に前記のモネの8枚の連作を展示する目的で美術館として整備された。世界にはモネの睡蓮は数あるが、これほどの大きさのしかも8枚の連作の作品はここでしか鑑賞出来ない。その迫力にはいつ行っても圧倒される。
モネ以外の作品も見るべきものが多数有り、マチス、ピカソ、セザンヌ、ルノワール等印象派の作品を堪能できる。

 名画の鑑賞後にはセーヌ河岸に出向きセーヌ川を行き来する観光船や貨物船を眺め一息つきその後は対岸のオルセー美術館に出向くのも良し,元来た道を戻りカルーゼルの凱旋門をくぐりルーブル美術館に行くのもお薦めだ。但しこれほどの世界的名画に囲まれた空間の中に1日中身をおくと食傷気味になる覚悟も必要かも知れない。

 さあ次は19区にあるヴィレット公園にでも行こうか。

(posted on 2022/11/8)

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