日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム
column

NO PHOTO NO LIFE ㉘ ~新たな映画スタイルの提案者~
対談企画 シネコヤ代表 竹中翔子さん

前書き

今回のゲストである竹中翔子さんとの出会いは今から約9年前の2013年に遡る。
その頃の僕は人生の大きな転換期に突入していて、その後長いお付き合いとなっていく数々の素敵な人たちと巡り合うという貴重な日々の連続を過ごしていた。
竹中さんとのご縁も例外でなく、その当時2013年の真夏だったと思うが今のシネコヤの原型ともなる映画上映会を神奈川県藤沢市の鵠沼にある貸しホールで彼女が主催していた時に参加して始まったご縁だ。
それから程なくして僕は生活拠点を今の山口県に移し、長い時間が経過した。
その間、竹中さんが目指した街の映画空間としてのシネコヤは5年前に会社化が成立し、実店舗として開店していた。
今回は「建築写真家」×「シネコヤという新たな映画のスタイルを提案していく方」との対談企画をほぼノーカットでお伝えします。

西田
ご無沙汰しています。
お会いするのは藤沢の8cafeで何かのパーティーというか街の顔役みたいな人たちが沢山参加している催しだったような?ほら「マイナスなエナジーはいらない!」っていう台詞が出た時の集まり!(笑)
あれからだいぶ時間経ちましたね。そして実店舗として開店されたシネコヤにやっと来ることが出来ました。
しかもこういう形で再会させて頂けた事を心から感謝しています。

竹中
その握手の仕方! 西田さんだ~(笑)
本当にお久しぶりです。シネコヤの事を覚えていてくれてありがとうございます。

西田
本日は僕が日本建築写真家協会の公式サイトにて連載させて頂いている月刊コラム内での対談企画という形でのインタビューになります。
建築写真の専門家が所属する職能団体のサイトでの掲載なので、まずは翔子さんにとってのお写真ってどんなものなんだろう?って。

 

シネコヤの代表にとっての写真とは

竹中
お写真、、、(笑)

西田
傍から見ていると、翔子さんって映画が専門って見えるから。

竹中
(少々の沈黙のあと)色んな意味合いを含めて物語(ものがたり)っていうか、、、

西田
へぇ~、ちょっと質問していいですか?
物語は写真を沢山繋ぎ合わせて動画にした方が物語として語りやすいんじゃないのかな?って思うのだけれど。要は映画としてね。

竹中
うんうん、
まぁ映画も写真の延長というか、活動写真と呼んだりもするくらいですから。
映画の成り立ちからしても1コマ1コマの連なりであるので写真と映画は縁が深いというか近しいものだと思うんですけど、私が写真を物語と感じる事が2つありまして。
1つは写真1枚の方が物語性があるというか、2時間の映画よりも写真1枚の方が物語性があると思っていて、その1枚で観る人にとって色んな物語を想像させるので2時間の具体的な物語を見せるよりもよっぽど物語性があるなぁと。

西田
なるほど。

竹中
映画というのはお話があって、ストーリーにも抑揚があるから感動させる事は比較的容易だと思うんですけど、写真1枚で感動してしまう事ってあるじゃないですか?
それってやっぱり凄い事だなって思っているのでそういう意味で写真の物語性の深さを感じてしまいます。

西田
それが1つ目ね。2つ目は何だろう?興味深いなぁ。

竹中
2つ目は、ここ(シネコヤ)が写真館だったっていうのがあって。

西田
え~!

竹中
昔ここで写真を撮った思い出がある!という方が地元には沢山いらっしゃるんですよね。
「小さい頃に七五三を撮った!」だとか「結婚写真をここで撮った!」とかお祝い事の時に来たハッピーな思い出の場所として皆さんの記憶に残っていて、そういう物語をなんか大事にして、こう繋いでいきたいな!ってそんな想いで今のシネコヤもやっているので。
ここカンダスタジオっていう写真館だったんですけど、あっ、入口のチラシを貼ってある所にそのカンダスタジオっていう看板も残してあるんですけど、そういう物語っていうか、その写真館だったところからシネコヤになるっていう風に人々の思い出も繋いでいきたいなぁっていう想いでやっているんですよね。

西田
これは写真に対する想いとシネコヤの何にまつわる話って事になるんだろう?
場所を選ぶ時にそういう理由が既にあったんですか?

竹中
あ~、そこは全然意識してなかったんですけど、でも写真館で探していたんですよ、実は。
写真館ってショーウィンドウがある建物が多いんですよ。あとレトロな雰囲気とか建物自体に趣があるっていうか、凄い良いなと思っていて、古い写真館で探していたんですよね。
その写真館というものが所謂、活動写真の延長にある映画との繋がりの深さ!というところで、なんかお店(シネコヤ)のストーリー性的にも結果的に美しかったなぁって。映画をやる場所として。
それはここでやろう!と思った後にそう感じたことであって、最初から狙っていた訳ではないのですけど、たまたま「ショーウィンドウがあって」「写真館で」という建物を狙っていたらこの建物に出逢ったという感じです。

 

シネコヤ代表 竹中翔子の赤裸々

西田
翔子さんとのご縁自体はかなり前の話になるけど、改まってこんな風にお話する機会が今までなかったですもんね。
あくまでも藤沢で活躍されている方の一人として、まぁ会釈はするけど。ぐらいな距離感だったというか。僕も当時はまだ写真を生業とする立場の人間でもなかったし。でも当時から傍から見ていて翔子さんには映画に対する並々ならぬ想いを感じていたんですよね。

竹中
え、あるかな(笑)

西田
その何て言えばいいんだろう。
趣味を超えて事業として経営をしていく事はおそらく労力的にも金銭的にも間違いなく大変じゃないですか?それでもその翔子さんを突き動かしたモノって何なんだろう?って。
逆に翔子さんにとって映画ってどんな存在なんですか?

竹中
そうなんですよ!
どうして映画でなければならないのか?とか色々と自分自身で考えた時期があるんですけど、実はあまり答えが見つけられていないな、、、って思うんですよね。

西田
シネコヤが立ち上がったのはいつでしたっけ?

竹中
実は西田さんが観に来てくれたあの時の上映会が思い返せば1回目だったんですよね。
それまでは別の団体の一部でシネコヤという名前で活動はしてたんですけど、当時はまだボランティア的な感じでやってたんです。なので西田さんが来てくれたあの上映が実質1回目だったんですよね。
あの時のIVY House(レンタルスペース)での上映会がきっかけで、今のシネコヤのスタイルのイメージが具体化していったって感じですね。

西田
そうだったんですね。でもどうしてそれまでのボランティア的な活動から、本格的な経営を目指すようになったんですか?

竹中
映画って斜陽って言われているけれど、本当に「ここまで斜陽なんだ!」って思いましたね。
業界全体のなんだろう?うーん?
本当に薄利多売の世界だなって。客席数があってナンボ!って感じなんだなって。
今、ほとんどの商売が薄利多売の世界だと思いますけど、映画もそうだったんだなっていうのを凄い実感しています。
でも何だろう?映画だから!映画がすごく好きだから!やれてるっていう事よりも、、、

西田
はいはい? 何だろう?

竹中
意外とわたし映画全然見ないんですよ(笑)
ここで上映する映画の選定をする為以外には殆ど見ないんです(笑)

西田
。。。(唖然)(笑)
えっ、ちょっと待って待って(笑)

竹中
いや~、作品選定する為に見るのでさへ苦痛(笑)みたいな時もあります(笑)

西田
それは絶対に皆さんからすると意外よね!

竹中
そう(笑)オタク的に映画を沢山見ていて知ってるような事は全然なくて、逆にお客さんの方がよっぽど詳しくてお客さんに教えてもらったりとか(笑)
古い映画とかに関してもご年配のお客さまに「こういう映画あってさ、、」っお話をして頂いても「そうなんですね!」ってしか答えられないみたい!みたいな。

西田
凄い意外!

竹中
どちらかって言うと「空間づくり」っていうところに自分の軸足があるんじゃないかなっていうのは感じてますね。

西田
そうなんですね。SNS等で公開されている翔子さんのキャリアを拝見すると、映像に関係する学校を卒業されてるじゃないですか。だから根っからのね、、、

竹中
そういえば(笑)

西田
映画の世界で生きていく事をずっと望んできた方なのかなって思ってました。

竹中
憧れてはいましたけどね。
映画オタクに凄い憧れていたんですよ!

西田
(笑)

竹中
わたしも映画オタクになりたい!って。

西田
滅茶苦茶シュールですね。
シネコヤの代表の口からその台詞って(笑)

竹中
ホントに憧れてて、、。
学生時代とかいるじゃないですか?映画オタクの友達とかって。そう言う人たちの話を聞いているのが楽しかった!というだけで自分自身は全然オタクになれなかった(笑)

西田
いや~ホントに意外。
相当数の映画を観てきた方だと思っていました。

竹中
映画のこと、実は何も語れないですよ(笑)

西田
撮るほうも?
なんか現場に出てたとか、アシスタントだったとか?

竹中
全くないですね!

西田
(笑)(笑)(笑)
映像の世界の現場で勤めていた方なのかな?とかも思ってましたしね。

竹中
いやいや、もう全然、全くないですね。
確かにそういう大学には行ってたんですけど、ホントに学生レベルでの映画製作しかやった事がなくてプロの現場は見学くらいしかした事がないです。

西田
へぇ~。

竹中
ちなみにこの映画は好きだとか嫌いだとか個人的な感想ぐらいだったら語れますけどこの監督のこの構図があーでこーでみたいなのは全然分からないです(笑)
だから映画!というよりもむしろ古本屋さんが好きだったっていう。昔は個人店がいっぱいあったじゃないですか!個人店の古本屋さんに小・中学生の頃とか別に何かを探している訳ではないのだけど、何故かその空間にいることが好きだったなぁとか。

あと映画館のロビーが好きだったんです。高校生の頃、映画館でバイトしてたんですけど
その時もなんかロビーに流れる時間ていうのが好きで、それこそ時間の流れがゆったりしてて、みんなが映画を観終わった後に、こう「はぁ~」って余韻に浸っている感じが。
映画館でアルバイトをしていた頃はまだ藤沢にはシネコンは無かったので藤沢オデオンとかフジサワ中央とか、、、昔ながらの街の映画館みたいな。
なのでロビーがやっぱりこういう空間(シネコヤ)だったんですよね。なんかそういう空間を再現したいっていうのがあったのかもしれないなって思います。

西田
いま具体的に好きなモノとして古本屋と映画館のロビーってキーワードが出てきたけれど、そういったモノを通して自分が何に魅かれているのか?ていう部分の答えは自分自身の中で定義化ができるてるんですか?それとも漠然としているの?

竹中
そうですね~。漠然とかなぁ。
まだそこははっきりと自分自身において言語化できていないというか。
なんかイメージとしてはフンワリとあるんですけど、うん。
でも、まぁ映画にかかわらずですけど、映画を作るような大学に行こうと思ったきっかけだったりそういう理由に近いモノがあるとするならば、なんとなく自分と向き合う時間じゃないですけど、映画を観る事で、或いは本を読むことで、誰かの物語であったり言葉ではない目に映ったものの印象だったり、なんかそういったモノを自分と照らし合わせて自分と向き合う時間みたいな感じだったんですかね。映画は特に問題も含めて社会を映し出してるものが多いなって思うんですよね。私、世の中に一杯文句があったから、学生時代の頃は。(笑)そういうものを映画が描く中の社会に重ねて観ていたのかもしれません。

西田
へーぇ

竹中
そう、だから社会と自分の接点!みたいな事を映画に見ていたのかもしれないですね。
それは今もそうかもしれなけど。
世の中を反映して作られている映画は其々の社会問題を個別に見れたりするので自分には合ってるなぁとか思うんですよね。

 

シネコヤの魅力とは

西田
まぁ、なんだろうね。シネコヤの事としてインタビューをしているんだけど、そのシネコヤの代表のキャラクターが結構濃いよね(笑)

竹中
(笑)ねー。それいいのかなぁ?

西田
だからシネコヤ・ファンの皆さんって勿論この空間もそうなんだろうけど、ご常連のお客さんって翔子さんのそのお人柄に寄せられてるところもあるんじゃないですか?

竹中
どうなんだろう?
まぁオープン当初とかシネコヤを「つくるぞ!」みたいな頃は確かに自分自身にも応援を向けてもらってるなって。当時30代前半とかで「若いね!」って言われていたのでそういった意味では応援してくれてるなってのがあったんですけど、お店を実際に持つと急にもてなすお客さんの数が圧倒的にパッと増えるじゃないですか?

西田
それは、そうよね。

竹中
そうすると経営者のキャラクターで応援してもらうには相当なタレント性みたいなモノが必要になってくるなって。私にはそこまでの物はないし(笑)

西田
そんな事はないんじゃない。むしろ十分発揮されている気がしますけど。
偉そうな事は何にも言えないけど、SNSなど傍から見ている限りでは老若男女の境なく翔子さんの人柄としても人気を博しているように見えますけどね。
ただ語弊があるかもしれないんだけど、魅力があって惹かれるんだけど一定の距離まで近付くと、そこからはもう入れてくれないような雰囲気も出てますよね(笑)翔子さんって。

竹中
なんか、それホントによく言われるんです(笑)

西田
そりゃ、言われるでしょ(笑)

竹中
どういう事?って。本当によく言われる!

西田
領域ってやつなんでしょうね。
竹中翔子っていうシネコヤの代表としての。

竹中
自分では本当によく分からないんだけど、こういう一歩踏み込んだ話をする人にはよく言われる。普通の人に比べて器用に立ち振る舞えないからそう見えるのかもしれないですね。

西田
いずれにせよ、そのキャラクターに魅力を感じて応援してくれているお客さんがいるって事は間違いないと思いますよ。

竹中
「シネコヤみたいなお店をつくりたい」というような方のお話を聞くこともあるんですけど、そういう方々は確かにある程度、私のキャラクターに照準を合わせて下さっているのかなぁって思う部分もありながら、実際に店舗に来店されるお客さんは、立ち上げ前から応援してくれている常連さんは別として、ここがオープンしてからの新しいお客さんはシネコヤそのものを見てくれてる人の方が、多いのかなぁって思うんですよね。
だから、両方あっていいのかなって。
シネコヤとしての部分と竹中翔子がやっていきたい事をもっと実現していくっていう。
そうすれば、竹中翔子のファンを獲得しながら結果シネコヤのファンのお客さんもついてきてくれるのかなって。

西田
映画鑑賞以外にもこの空間でゆったりと美味しい珈琲が飲めたりするっていうのは嬉しいし、サービス項目としてはとっても大切ですよね。その上、工房でつくられた手作りのパンが食べられるって、お客さんにとっては、とても嬉しいサービスですね。あと、この凄い量の本は?

竹中
本は、販売は行ってなくて、所蔵の本は空間づくりの一部分。
寄贈して頂いた物も多くて、今後もう少し選書もしていけたらなぁと思ってるんです。他の映画館との差別化っていう部分で敢えてシネコヤをめがけて来て頂く為のアイテムの1つになるといいなと思っています。

西田
主軸の映画上映のお話をもう少し詳しくお聞きしたいのですが、シネコヤで上映する映画は翔子さんが選定されているのですか?

竹中
そうですね。

西田
選定基準があるんですか?
社会性があるものとかシネコンでは上映されていないものとか。

竹中
一応、観てから選ぶ作品がほとんどなんですけど、もの凄いヒット作は観ないままでの上映決定もあります。
私個人として好きな作品が上映作品に選ばれる事もありますが、それだけではありませんね。やはり集客ができる作品として選定に入る作品も当然あります。

西田
それは経営上大切なことですよね。

竹中
間口を広げていくことによって、色んなお客様に来て頂いて結果として他の見て欲しい作品も見て頂けるきっかけになるのかと思いますしね。
でも「店主さんがいいと思ってるから選ばれてるんですよね?」っていうのは、やっぱりよく言われますね(笑)

西田
確かにそう思われがちな部分は多いでしょうね。

竹中
「そんな事ないんですよ~」とはお客様には言うんですけどね(笑)
それと、「凄くいい映画だな!」と思っても公開館が少なかったり小さな会社が配給していたりすると、結局その映画の存在自体を知らない人の方が圧倒的に多かったりするんです。だけどそういう作品も届けられるようにしたいなぁと思っているので、「お客さんはあまり入らないかもしれないけど、この映画はやっておきたい!」みたいなのは勿論入れておきつつ、「個人的に好きではなくてもお客さんが間違いなく入るであろう」作品もまんべんなくやりつつっていう感じですかね。

西田
あと、他に聞いておきたい事あったけなぁ?

竹中
ところで西田さん、なんで数ある色々なお繋がりの中からシネコヤにお声がけいただけたのですか?(笑)

西田
取り組まれていることが魅力的だからですよ。即答できます(笑)
でもそれは今に始まった事ではなく前から感じていた事なんですけどね。
自分の中では、ご縁を頂いて間もない頃に参加させて頂いた(先ほど話にも出た)IVY Houseでの上映会に参加した頃から。
あのIVY Houseでの上映開始前の前説としての翔子さんのお話もね。お話されているのを見ていて独特のオーラがある方だなって(笑)
ただ当時は、こんな風にお話をする機会もなければ対談という形を成立させる事ができる動機もなかったでしょ?僕もその頃はまだ職業カメラマンという立ち位置ではなかったし。藤沢で活躍されていらっしゃる方の一人としてお会いすれば会釈はするけれど、みたいな距離感でのお付き合いでしたからね。
ただあれから時間が随分と経過して、自分の人生の歩み方も大きく変化して、気が付いたら写真を生業にしていて、職業写真家が所属する職能団体の公式サイトでコラムを連載するような生活に変わっていた。なので今の自分の職業を考えた時に映画に関する事を生業としている翔子さんは、今回仕事の都合で東京へ上る事が決まった際に真っ先にお会いしたいと思った方の一人でしたよ。
それと実はね、僕シネコヤさんのメール会員なんです(笑)2013年の当時に登録しました。
だから、翔子さんとはずーっとお会いしてなかったんだけれど、定期的にシネコヤからはメールが届くわけ!その度に頑張ってらっしゃるんだなぁとか、実店舗をオープンしたんだ!とか。僕としてはご縁が途切れた感じではなかったんですよね(笑)
それで、お声をかけさせて頂いた理由に戻るのですが、基本僕は表現やアートにまつわる事に携わっていらっしゃる方々が全般的に好きなんですよ。ミュージシャンでも、絵描きさんでも、物書きさんでも。
アートが好きな人って世の中に無数にいて、オタクの域で好きな人も沢山いて、でもそれを更に突き抜けて生業にしちゃってる人たちっているじゃないですか?
僕もカメラマンをやってて思うんですけど、好き嫌いだけじゃ成立しない大変さからいうと趣味と生業のその一線の境を超えるか超えないかは想像を超える違いがあるじゃないですか。だから生業にしてしまった人たちのその尋常じゃないエネルギーに凄く魅かれるんですよね(笑)

竹中
はたして生業になってるかどうか(笑)でもここで開店してなんとか5年になりました。

 

これからのシネコヤ

西田
遅ればせながらおめでとうございます。
それは、それこそ斜陽産業と言われている映画館事業で、この藤沢のいい場所でこのお店の広さで、経営者目線でのお話をお聞きすれば大変な事もきっと沢山あるでしょう(笑)
翔子さんの事業に対するロマンが可能にしているのでしょうね。

竹中
(笑)
あ、このお話しておきたいです!

西田
はいはい、お聞きしましょう(笑)

竹中
やっとスタートラインに立ったぐらいの気持ちなんです。実は。
「シネコヤを作りたい!」っていうのが目標の様に言い続けてきたんですけど、それがゴールではなくてその先に本当のやりたいことがあって。
藤沢にしても昔ながらの街の映画館がなくなっちゃって、地方都市で映画館を残していくって本当に大変だと思うんですよね。いま藤沢には人口約43万人いて、そこそこの人口規模なのにそれでも60年続けてきた映画館がやっていけないのかって思うと、よほど切実だなって感じて。なんかその映画館というモノの見方自体を変えなきゃいけないんじゃないかって思っていて。
映画館がない街ってつまんないなって思うんですよね。美術館もそうですけど。
映画館とか美術館とかライブハウスとか本屋さんとか。そういうものが無くなっちゃう街ってどうなの?って思うんですよね。そういう文化的なモノって個人店にしても生き残っていけるような形を作っていかないとって。
「売上られないから撤退する」という事が大きい企業ではどうしても起きてしまうので、
個人経営でも会社経営でもいいから何か成り立てていける仕組みがないか?と模索して大きなホールではなくて20席と小さいけれど複合的なものとしてそれを新しいスタイルの映画空間として作っていきたいなって思っていて。

西田
今日の話の肝ですね、いま!

竹中
(笑顔)色々な街にシネコヤみたいなお店が出来たら、色々な街に映画文化を残していけるんじゃないかって思っていてそれをやりたいんです。
なので、今このシネコヤというものを一つのモデルケースとして作って色々な街で真似してもらえるような仕組みを作っていきたいなって思ってます。

西田
なるほど。今日のインタビューに必要な答えが出ましたね!

竹中
なのでモデルケースの一つとして、この鵠沼では「映画と本とパン」のお店としてやってみたんですけど、それぞれの街によって組み合わせるものは違っていていいと思うので、例えば「映画と雑貨」とか「映画と花屋」とか、そのやる人の想いとその街にマッチする+αで色々なスタイルのシネコヤが出来るといいなって思ってます。
一つのモデルケースとして経営面も含めて一応、「生業になります!」って形を作らないといけないと思ってるので、まだまだ課題はありますけどね。

西田
なぜシネコヤをやっているのか!?その動機が凄くよく伝わりました。
翔子さんの胸の裡の根底に「映画館や本屋さんが無い街ってどうなのよ!?」っていう疑問だったりフラストレーションだったり、「疑問と不満と」そういう強いエネルギーがシネコヤを継続させていく力の根源の一つにあるのかなって。
誰かがやってくれたらいいなって人は沢山いると思うんですよね。でもそれを自らやるにはとても強いエネルギーが必要だと思う。
何でもそうだと思うのですが、あまり満たされていたら物事って辛抱強くできないんですよね。やっぱり欲していたり、このままでいいんだろうか?っていうような強い疑問を感じていたりしてないと。
なのでそういう強いエネルギーを生む動機って翔子さんの場合どこにあるんだろうっていう事に興味があったので、とてもよく理解できました。

竹中
シネコヤやろう!って思った時からずっとそこらへんを目標としていて、シネコヤを作るのは通過点でしかなくてそれから色々な街に真似してもらえるようなモデルケースになるっていうのが目標です。

西田
けっこう目標が大きいですね(笑)

竹中
(笑)

西田
シネコヤの開業が目標でも十分凄いと思うのですが更にまだ続きがあったんですね。

竹中
目指せ「激落ちくん」!なんです。

西田
ん?

竹中
意味分からないですよね(笑)

西田
激落ちくんって、あの激落ちくん? 水だけで汚れ落ちる。

竹中
はい(笑)
激落ちくんが世の中に出たとき、凄いびっくりしたんですよ。えーこんなものがーって。
水だけでこすると汚れが消えるスポンジは全部「激落ちくん」って呼ぶじゃないですか。 

西田
はいはい(笑)

竹中
あの人、ホントはメラミンスポンジさんなのに。

西田
(笑)

竹中
「激落ちくん」は商品名なだけで、他にも「激落ちくん的なモノ」はあるけど、でも全部「激落ちくん」って呼ばれるじゃないですか?なんか、そういうふうになりたい!

西田
(笑)なるほどね

竹中
シネコヤっていう名前が独り歩きして、色々な街に「こういうスタイルのお店はシネコヤと呼ばれる!」みたいな。
映画館というのがあったとして、その次に出てきた言葉がミニシアターっていう言葉があって、なんかこれからもっとミニマムな「シネコヤ」
今は固有名詞ですけどそれが一般名詞化するような、多くの皆さんが使ってくれるような名前になるといいなぁって思ってます。

西田
いやぁ~、見た目はキュートだけど脳の中身は世界征服を本気で企む人と構造が似てますね(笑)

竹中
(大爆笑)

西田
いや、いや冗談ですけど(笑)素晴らしいと思いますよ!

竹中
よく中身がジャイアンだって言われます(笑)

西田
そーゆーしたたかさを普段見せないもんだから、分からないよね僕たちは(笑)
でもその構想を聞いて流石だな~って思いました。話を真面目に戻すとピュアなんでしょうね。自分の想いに。
最後の締めに開店してからの「この5年間」を振り返って思う事とは?

竹中
やっとスタートラインに立てました!

 

後書き

竹中翔子さんの最後の一言がシネコヤへの決意と夢を物語っている。
神奈川県藤沢市鵠沼という湘南エリアの海外沿いの街に、街と文化と歴史の架け橋になる事を諦めない素敵な経営者が営む小さな映画館があります。
街の人はその場所を「シネコヤ」と呼びます。
そんなシネコヤと呼ばれる素敵な映画館のある町が日本の多くの街に広がっていく事を僕も願っています。

Information
神奈川県藤沢市鵠沼海岸にある「映画と本とパンの店」シネコヤ
オフィシャルサイト http://cinekoya.com/

(posted on 2022/6/20)

西田慎太郎

Writer:

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