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日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム

Column

NO PHOTO NO LIFE ㉕
~福岡発 人気バンド「新生DOGGY DOG DEE」宣材撮影~
対談企画 ゲスト吉本 昌亮 氏(DOGGY DOG DEE Gt.&Vo.)

2月某日
福岡県を拠点に活動する人気バンド「DOGGY DOG DEE」さん*以下DOGGY
からオファーを頂き宣伝素材の撮影を行った。
来年のバンド20周年というアニバーサリー・イヤーを目前にして新たなメンバーと共に新生DOGGYとしての再始動との事で、そのオファーは僕にとってとても光栄なものだった。
そして撮影から約1週間後の3月に入り、今回はDOGGYのバンド・イニシアチブでもあるGt.&Vo.の吉本さんをゲストに迎えて広い意味での同じ表現者としてクリエイティブな活動に関するロングインタビューを対談企画のもと行ったので是非ともご紹介したいと思う。

西田
先日はお疲れ様でした。その後SNSやフライヤーなどで使って頂いているのも拝見しましたけれど、写真大丈夫でした?(笑)

吉本氏
いや~もう、ばっちりよ!!
なんかもう2回目撮りたくなってきたもん(笑)

西田
ほんとですか?それなら本当に良かった!
DOGGYさんみたいな人気バンドの撮影ってなるとかなりプレッシャーでしたからね。
かっこ悪い写真撮ったらファンの皆さんにボコボコにされるじゃないか!って(笑)
今日の企画は僕の方からオファーさせて頂いて、吉本さんのようなアーティストと写真やクリエイティブな活動に関して是非とも対談できたらな~と思い、お誘いさせて頂きました。日本建築写真家協会の公式サイトにて僕が連載させて頂いている月刊コラムでの企画なので、まずは写真に関する話からテーマにしたいと思うのですが。

ミュージシャンとして写真に求めるものとは?

西田
表現者としての吉本さんにとって「写真」ってどんな意味があるんでしょう?
今回、バンドの節目となる新生DOGGYの宣材撮影のオファーをくれましたが、吉本さんが求める写真の要件って気になります。

吉本氏
俺は写真の知識がないから難しい事は分からないんだけれど、自分が被写体になるって事は、「ひっかかり」。
どういう事かというと自分の音楽もそうなんだけど今回撮ってもらった写真一つにしたって「2度見させたい!」それは俺、若い時からそうなんだけどコピーであろうがオリジナルであろうが自分らの音を聴いて「ん!?」って。
そりゃ、熱狂的なファンが沢山いてくれたら嬉しいけど、立ち位置的に俺らに興味の無い人をいかに振り向かすか!それがその道の玄人であろうが素人であろうが俺は常に誰かを振り向かせたい。そういう想いでやってきてるから今回撮ってもらった写真もそうあったら嬉しいなぁって思う。

西田
それに適う写真だったら嬉しいですけどね。

吉本氏
俺にとっては、まさしくそんな写真やったからね!
ほんとすげぇ!って。自分で見てて楽しいしね。

西田
僕は仕事での撮影は建築写真が過半数なので、実は住宅メーカーの社長さんなんかにも同じ質問投げたりするんですよね!
そうすると「お客さんとの接点の間口を広げてくれるモノじゃないか」って、そんな答えがよく返ってきます。
今、吉本さんの返答聞いてて同じだな!って。
「写真」って撮る人が主役じゃなくて被写体が主役なので、写真を見た人がその被写体に好奇心を抱いたり感動を見出してくれないと職業カメラマンが撮った写真としてはそこに価値が見いだせなくなるって。僕は常々それを肝に命じて撮影をしてるんですよね。
ちなみに被写体を務めるってどんな感じでした?(笑)

吉本氏
それに関しては全然アマチュアだよね(笑)
経験値が少ないからね。

西田
撮られている間、「早く終わんないかな」とか「意外と楽しいなぁ」とかって感覚、被写体を務める上では結構大事だと思うんですよね。

吉本氏
「早く終わんないかなぁ」は1ミリも無いよね!
それは、クリエイティブな空間っていうか、しかも自分がオーダーして撮ってもらっている訳だから。ライブフォトは沢山撮ってもらってきたけれど、「写真を撮るだけの為に、今日来ました!」みたいなのは10回も無い(笑)
だから、逆に「もっと経験してみたい!」ってのもあるよね。
撮られるって事をもっと練習しないと上手くならないと思うしね。
特に下手なんよ。俺(笑)

西田
いやいや、でも前回の4THアルバムの時のジャケ写、あれメッチャかっこよかったですよね。寂れた商店街のシャッターの前でしゃがんでる写真。
とっても世界観が溢れてていい写真だなって思いました。あの写真がけっこうプレッシャーだったし(笑)

吉本氏
あの写真はリリースまでの時間がタイトでバタバタの中でお願いしたんよね。あれもカメラマンの腕です(笑)

西田
いや~それにしても良い写真でしたよね。

吉本氏
今回、だからあれに更に技術を足したかったのよ!
何ていうか、更に強靭なDOGGY DOG DEEの写真が欲しかった。
そういう意味においても、もうバッチリだったよね!

西田
ありがとうございます(笑)

吉本氏
あんな技を使ったら、あんな風に写るんやなぁって。

カメラマンに求めるものとは?

西田
今回初めて一緒にやらせてもらったわけですが、現場でカメラマンに求める事って何でしょう?
どういう事に注意してほしいとか、どういうカメラマンだったらやりやすいとか?
例えばおだてられ過ぎてもやりづらいとか、黙っていられると間が持たないとか。
写真自体に求める要件とは別にカメラマンに求める要件ってありますか?

吉本氏
経験値が少なすぎてそれすらも要望として思いつかないんだけど、そんな俺を寛容に受け止めてくれてくれたらそれでいいかな(笑)
感じが悪いカメラマンさん!ってのもこれまで当たった事無いしね。
俺たちの事を知ってて、俺たちの音も分かってて、その上で共感してくれるカメラマンさんだったら言う事無いけどね。
でも、全く俺たちの事を知らないカメラマンさんが「なんかそのツラガマエいいねぇ!」ってな感じで撮ってくれるのも、それはそれで写真にはまた別の可能性があるのかな!
とも思うようね。
とにかく同じ空間で何かをクリエイトしていくって事が楽しいから(笑)

どんな時に作品を作るのか?

西田
いま写真にまつわる話をしてきましたが、吉本さんにとっての主なクリエイティブな活動っていうと作品作りだと思うんですが、実際どんな時に曲を書いたり詩を書いたりするのかなぁ?って。これはファンの皆さんも興味ある所じゃないかと思うんですが。

吉本氏
どんな時!っていう決まりは無いんだけど、かといって気が向いた時だけ作るってのも違う。メジャーにいるプロみたいにリリースが決められて、それまでに作品をノルマとして作らないといけないような過酷な環境ではないんだけど、メジャーとアマチュアの間でそんな責任をちょっと自分で感じながらというか、勝手に背負いながらというか(笑)
「でも俺は自由だぜ」って言い聞かせながらやってきたような気がするかな。

西田
数々の楽曲を制作されてきてると思うんですが、例えば「BLACK RAIN」と「baby’s breath」ていう同じバンドの曲と思えない程、キャラクターの異なる楽曲がありますが、作り手の吉本さんにおいてどういうメンタルの違いがあるのかな?って。
そもそも吉本さんは作詞に関してはフィクションを書くんですか?それともノンフィクションとして心に受けたものを作詞という形でアウトプットしていくんですか?
素晴らしいものならお伽話でもいいのか、それとも自分の歌にはリアリティがなければダメなのか?吉本さんにお聞きしてみたいなって。

吉本氏
詩に関しては、リアルな部分が大半じゃないかなぁ。俺ね、フィクションじゃ書けないような気がするんよね。っていうか詩に関してはね、実は致し方なくやってるところがあって、本当は誰かやってくれないかな~っていうね(笑)
曲はね、やってればなんとか出来ちゃうからいいんやけど(笑)

西田
いやいや!それはないでしょ(笑)

吉本氏
だから曲は生みの苦しみって感じは今まであんまりないんだけどね。
かといって詩も自分にとっては音なんよね。ある意味、曲の一部。
言葉の持つ音の響きっていうかさ、、。

Baby’s breathという曲

西田
ちなみに僕がDOGGYさんの曲の中で大好きな「baby’s breath」は吉本さんが作詞なんですか?っていうかストレートに質問してもいいですか?
吉本さんにセンチメンタルってあるんですか?(笑)

吉本氏
(大爆笑) センチメンタルの塊ですよ!

西田
みんな、何気に聞きたいところだと思いますよ。
どんな感じで吉本さんがあの詩をかいたのか?って。(笑)

吉本氏
いやでもあれは、誰でもない俺が書いた詩なんよね(笑)

西田
あれだけセンチメンタルな曲。どんな人が書いてるんだろうって思う(笑)
珠玉の名曲だと思いますよ。
僕にとっては、俗に言うメジャーな人たちの音楽も含めた上でこれまで聞いてきたバラードの中でも特に好きな曲ですからね。

吉本氏
いや~、嬉しいね!(笑)

西田
普段ソリッドなロックをやってる人たちだから、そういった勢いのある曲の連続の中で、あんな曲をいきなりやられちゃたら余計にね。
みんなハートを撃ち抜かれちゃうんじゃなかなぁって(笑)

吉本氏
そうかなぁ?
いや、俺は逆に当時あの曲をやり出したら帰っちゃうお客さんが出ちゃうんじゃないかって心配でね。その当時のDOGGYのバンドキャラクターを考えたら。
それとこの曲を作った当初はね、作品に自分の表現力が追いついてなくてさ。
ホントにきちんと歌えなかったり、荒っぽいまんまのギターで奏でちゃったり。
表現力が全然追いついてなくて一時封印してたのよ(笑)
1stアルバムに収録されてる曲なんだけど、実はアルバムに入れること自体最初は迷っていて当時のドラマーが「入れた方がいいよ!」って。その一言で決めたんよね。
で、それから何度かメンバー変わりながらもDOGGYを続けてきて、いまここにきて戻ってきたんよね。そのドラマーが(笑)

西田
え?新たなメンバーの有馬さん!?

吉本氏
そう、あの彼が実はDOGGY DOG DEEの初代ドラマーなんよ!

西田
えー!!
そんな再会のドラマの上に成り立ってる新メンバーでの再始動だったんですね!

吉本氏
確かに色々あってね。耐え忍んだ日々もあって。
でもそれ以上に色んな日々が更にあって、気が付けばその色々が気にならんぐらい俺も成長したんやと思う。(笑)
それで巡り巡って今に至ってるんだけど、俺だってこんな風になると思ってなかったからね。いま改めてドギーは最強って言い切れるし、そんな環境の中でバンドライフを送れているのは幸せだなって思う。
だから約20年前に書いた曲達も20年前よりも20倍くらい楽しいなって思いながらやってるよ。(笑)
「baby’s breath」もそんな1曲。

西田
素晴らしいですね!

20周年を迎えるにあたって歌い続ける意味とは

吉本氏
西田くんがくれた質問でこの質問が今の自分には一番核心をついた質問かなって思うんだけど一言でいうなら
「応援者、支援者がいてくれるから!」この答えにつきるかな。
っていうか、ちゃんと答えたいからちゃんと答えるね(笑)
昔は、ただ「やりたいから!」っていう一言につきたと思う。事務所に入ってるわけじゃないしさ。当然その頃に、バンドとしてのビジョンとか戦略とか夢、目標すらなかった。
とにかく「やりたい!」っていう目の前にある情熱にエネルギーをただただ注ぎ込む事がDOGGYの世界観を生み出してただけ!っていう。
今は、やっぱりそれだけじゃね、、、
長くやってると、「それだけではすまない」っていう風に経験としてなっていった現実が沢山あるし、40歳を過ぎた頃から思う事があって、何でもいいけど才能や能力や人を喜ばせる事ができるものがあるなら人はそれを果たすべきやないかなぁって。
「何故歌い続けるのか?」っていうのは、実はそこに理由があって、俺にはたまたま音楽しかなくて。でも音楽がちょっとだけ得意で、それで僅かでも喜んでくれる人がいるのなら「あなたはそれを果たしなさい」って、俺はそう言われているような気がしてね。
40歳を過ぎてからの、この10年くらいでようやく分かってきたような気がする(笑)

その能力が有るか無いかは自分で決める事じゃないのかも知れないけど、
俺がいう能力ってのは、一見下手くそのようであっても、プロの人からすれば聴いてられないレベルであったとしても、「この人の歌を聞いたら元気が出るんですよ!」っていうような人が1人おれば、そういう人が一人でも観に来てくれたなら、俺はそれはライブだと思うんよね。だから、俺はやるべきや!と思うんよね。

生みの苦しみとは

吉本氏
それでもやれない人もいると思うし、人それぞれ理由があって「やれない人生」も
勿論あってもいいと思う。俺の場合は幸い今のところ、なんとかやれる環境を手に入れる事が出来ていて、そこには確かに色んな犠牲をはらってるんだけど「やるしかないよね!」って変な使命感があるんよね。
苦労と言えば、段取りと資金かな(笑)
仕事をしながら音楽を続けているから、メジャーのプロと比較したときに資金の面でも音楽に接していられる時間も圧倒的に少ない中で作品を作っていかないといけないから、生みの苦しみって言ったら、いかに時短を意識しながら作業するか!その部分だよね。
だから俺、凄い(レコーディングとか)早かったよ(笑)
今は、一緒にクリエイトしてくれるエンジニアの仲間がいるからね。昔に比べたらじっくりやれるようになったけど、それでも貧乏性なのか時短してしまう(笑)
それと、今は「和合」やね。

西田
「和合」?

吉本氏
そう信頼関係。
それこそエンジニアともそうだし、バンドのメンバーもそうだし。
今は作品作りに関わる人たちとの和合を大切にしとるかな。
まぁ、「どの口が言いよるのか!」って言う人もおると思うけどね。(笑)
アンチも沢山おらっしゃるので♡
生みの苦しみに関しては、今はそんな風に自身に決着させとるんかな~。

クリエイター、そしてパフォーマー。心得とは

西田
今日、最後の質問ですがクリエイターとして、そしてパフォーマーとして両方の立場で心得てることって何ですか?

吉本氏
自分自身を「パフォーマー」っていう感覚で捉えた事はないんだけど、
自分の感性に正直にしてきたよね。妥協せずにきたかな。それは言い切れると思う。

西田
例えばステージ上でいえば、吉本さんのライブパフォーマンスって観たことがある方なら分かると思いますけど、まぁ圧巻じゃないですか(笑)
あれだけアクションしながら最後まで演奏できる人って中々見たことがないですよね(笑)
だから鏡のあるリハーサルスタジオなんかを使って綿密にステージパフォーマンスのリハーサルをしてるのかな?って。例えば、「この曲のここでギターを持ったままターンをする!」みたいな。

吉本氏
あ~それは無いね(笑)むしろ、そういった事を決めない事をルールにしてるくらい(笑)ただ自分のライブのビデオは見返す事はするけどね。音の状態や反省点を把握する為にね。

西田
じゃあ、全てステージ上での瞬間瞬間をフィーリングで表現してるんですね!?

吉本氏
そうそう、一切決めてない。それこそライブはギターソロとかもアドリブが主体なんよね。それができるDOGGYが気持ちよくて。

何故かっていうと、それがビシっと決まった時が、決めごとを作ってやるよりも何倍もかっこいいっていう事が分かってしまって。「決めない事!」が癖になってるみたいな。
1コードとか2コードの曲が多いもんやから、そこはその時のエネルギーがどうなるか?みたいなね。自分でも何が起こるのか分からんのやけぇメンバーは更に大変よね(笑)
「こいつ何するか分からん!」みたいな感じでね(笑)

西田
なるほど!そういったスリリングさが、あのDOGGYのタイトなステージを生んでるんですね。それは、ほんと面白い話ですね。

吉本氏
バンドしては決める事はみっちり決めるんだけど、個人のプレイやパフォーマンス関してはあまり決めない事をルールにしてるんよね。
後は「お客さんにどう映るか?」ってのは結構意識してる。「どうやったらカッコいいか?」よりも「ダサくないようにしたい!」っていうね。
それは、ライブ中にも直感で感じながらやってるのかもしれないな。

西田
てか、こんなに真面目に喋ってる吉本さんをみんな見たこといでしょうからね(笑)
今日は貴重なお話を本当にありがとうございました。この対談が世に出るのはおそらく3月の20日頃だと思いますが、再始動一発目のワンマンライブ直前ですね。その日は僕もライブ撮影でお祝いに駆け付けますので、また近くお会いできるのを楽しみにしてます。

吉本氏
こちらこそ、楽しかった!
本当にありがとう。

2023年には20周年を迎えるDOGGY DOG DEEの新たな挑戦がはじまる。
新メンバーによる再始動として3月26日のワンマンライブを皮切りにライブサーキットが開始される。そんなバンドの節目にカメラを片手に改めて出逢えたことを心から感謝している。

【DOGGY DOG DEE】インフォメーション

DOGGY DOG DEE公式YouTubeチャンネル
https://m.youtube.com/channel/UC3lagrOcDZuciZ72SMB1DXQ
サブチャンネルdog doggy
https://youtube.com/channel/UCWpSV1ZdC9pkS4KyBZjBBAQ

再始動ミニサーキット
3/13(日)@田川LOT(吉本ソロワンマン)
3/26(土)@西小倉WOW(ワンマン)
4/2(土)@飯塚第三倉庫
4/30(土)@湯田温泉西洋酒場山形屋(吉本ソロ)
5/14(土)@博多ZERO(吉本ソロ)
5/15(日)@宇佐音小屋Reboot
5/29(日)@小倉whipping post
6/25(土)@周南卓
6/26(日)@湯田温泉organ’s melody(ワンマン)

(posted on 2022/3/20)

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