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日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

設立25周年企画展
25th anniversary exhibition

コラム

Column

NO PHOTO NO LIFE ㉒ ~建材試験センター西日本試験所にてシフト撮影&ピクセルシフトマルチ撮影~

9月の頭にとあるご縁より撮影案件のお問い合わせをいただいた。
問い合わせで得た初回のインフォメーションは「屋外のコンクリートブロック撮影」という事で、きっと「マテリアル撮影だろう」と、その後の追加インフォメーションが知らされるまでは悠長に構えていた。
何故なら問い合わせを頂いたご依頼者の更に先に真のクライアントがいるようで、「詳細が詰まり次第、改めての連絡」という事だったので、さほど気に留める事もなく気長に続報を待っていた。

約1か月が経過しようとしている頃、「正式に撮影を依頼したい」と連絡が入った。
直接の依頼主は一般財団法人 建材試験センター 西日本試験所で主査を務められている早崎さんからだった。
早崎さんから伝えられた案件の詳細は驚くものだった。
メインクライアントは千葉工業大学建築学科教授の中野先生率いる研究室チームが研究している試験体の撮影という事だった。
研究中の試験体に関わる為、詳細を当コラムでレポートする事はできないが、撮影に関するニーズを聞くと精密さと工夫が必要な、かなり難易度の高い撮影になる事が予想された。「どのようにしてニーズに応えるのか?」すぐに試行錯誤が始まった。

全長約1.5メートルあるコンクリート切断面をミリ単位のレベルで判別できる撮影で、プリント出力が最大ポスターサイズまで大きくなる可能性があり、更には部分的にクローズアップ撮影したものを繋げて実物大のパネルを作ることが出来る写真が撮れるか?というようなニーズだった。
試行錯誤の結果、
「結合可能な連続的部分撮影」という方向と「切り出しに耐えられる超高画素による全体撮影」の2方向から撮影を行うことにした。

撮影当日、一般財団法人建材試験センター西日本試験所へと向かった。
下見の無いぶっつけ本番の撮影という事で約束時間よりも前倒しで現場へ到着した僕を
早崎さんが笑顔で出迎えてくれた。
この一般財団法人建材試験センターという組織は、
品質性能試験事業(材料試験、構造試験、防耐火試験、環境試験)
工事用材料試験事業(コンクリート試験、鋼材試験、住宅基礎コンクリートの品質管理試験、校正業務など)
マネジメントシステム認証事業(ISO9001、ISO14001、ISO55001、ISO45001、GHG排出量検証など)
性能評価事業(型式認定、適合証明など)
製品認証事業(JIS認証)等、
建材並びに建築及び土木に関する試験、認証、評価、証明等を行うことにより、わが国の建設産業の健全な発展に寄与するとともに国民生活の向上に貢献することを、目的としている組織で、そんな施設の西日本最大の試験場が山口県の山陽小野田市にある事に何より驚いた。
早崎さんが施設内のアテンドをしてくれて、間もなくしてからコンクリートの試験体の移動に必要な大型の重機が到着した。
あまりに大がかりな現場でプレッシャーからか笑いが出てきた。

そして、関東から千葉工大の中野教授と関係者の皆さんも現場に到着し、いよいよ撮影が始まった。

早崎さんから試験体をどのように撮影するか?それによって重機で試験体を希望の状態に移動させてくれると言うので僕は出来るだけ垂直に立った状態がいいと返事をした。
結合写真を作る可能性がある連続した部分撮影であるなら光軸がぶれぬようシフトレンズよるシフト撮影を考えていたからだ。
関係者が見上げる中、重機は試験体を吊し上げ、誘導に対して実に正確に試験体を垂直に設置した状態で静止した。

結合写真に必要なマージン約40%、そして70%未満を頭に入れて6400万画素のSONYアルファ7R4にマウントアダプターをかませてCANON製のレンズTS-E 17mm F4のシフト機構を使用し、断面上部よりシフト移動量+12mm, +6mm, 0mm, -6mm, -12mm の5段階でシフト撮影を行った。

そしてもう一方の撮影方法である超高画素撮影による全体撮影として今回、「ピクセルシフト・マルチ撮影」を行った。これは、半画素ずつずらして撮影した計16枚のRAWデータを重ね合わせて約2億4000万画素に及ぶ画像データを生成するというものだ。

試験体のコンクリートは計4本あり、規則的な撮影方法の反復で無事に撮り終える事ができた。

これまで「建築写真」というキーワードに関わる撮影を沢山してきたが、自分にとっては新たな部門の撮影を経験することになり本当に勉強になった。
とにかく、終始ワクワクが止まらない撮影だった。

この場をかりて、今回このような縁を繋いでくれた建材試験センターの早崎さんと、千葉工業大学の中野教授、そして関係者の皆様に心からお礼をお伝えしたい。

撮影後に試験体を取り囲みながら議論をしている関係者の皆さんの真剣な眼差しを見ると
研究の成果がきっと建築、建設の業界にとって必要不可欠な安全を保証していく明るい光になるのだろうと確信する思いになった。


千葉工業大学 中野教授(中央)と建材試験センター早崎さん(右)と私


撮影前、試験体コンクリート切断作業の模様


重機による撮影場所への試験体の移動の模様


撮影後、関係者の皆様の記念写真

*情報提供
千葉工業大学 中野研究室様 提供
一般財団法人建材試験センター (JTCCM)

(posted on 2021/12/20)

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