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日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム

Column

町並み探訪vol.28 (岐阜県高山市・その4)

JR高山本線にて富山方面へ2駅、10分強で飛騨国府駅に到着、ここから荒城(あらき)川沿いに約4km、そして坂道を上がった先が今回の訪問地、安国寺です。

室町幕府を築いた足利氏は、国毎に安国寺を設けました。
飛騨地方の安国寺は、以前からここにあった少林寺を前身として貞和3年(1347)に創建されました。この地を選んだ理由は、政治的・軍事的な重要地と判断したと考えられます。
当寺の寺紋は足利家の家紋と同じ事から、中央政権との繋がりも大きかったと考えられます。
本堂は永禄7年(1564)武田軍の戦火により焼失、江戸初期の再建と推測されています。


「太平山安国寺」

「本堂」左奥の一段高い場所が国宝の経蔵

経蔵は、室町初期の応永15年(1408)に建立されました。
飛騨地方唯一の国宝建造物に指定されています。

内部の八角輪蔵は、国内現存最古の遺構です。
輪蔵は元々中国で初めて考案され、その後日本にも伝わり、造られるようになったそうですが、ここでは禅宗建築様式で欄間、塗色などは中国で造られたものと同じ意匠となっています。構造的には、心柱が上から下まで貫き、そこに各部材が取り付けられています。
因みに今も輪蔵は回るとの事で、ご厚意で私も1周させて貰いました。流石に一人では重いので住職さんのお力をお借りしましたが、建築後600年を越える今でも回転は滑らか且つ異音等も無い事から、建築時の材料吟味や建築技術など最高水準で造られたのだろうと感嘆します。

ここに納めてある経本は、中国(元の時代)で出版されたもので、(元版大蔵経)全巻で約5,400巻あるところ、現在では約2,200巻が保管されているそうです。これだけの規模で良好に保管されているのは全国でも南禅寺や増上寺など有名寺院にて10セット程度しか無く、地方では大変珍しいそうです。
昭和38年(1963)に国宝に指定されるまでは一般に開放されていた事から近所の子供達の遊び場だったらしく、こんな身近で歴史あるものに囲まれていた地域の方達は今考えるととても贅沢な事だと思います。


「経蔵」拝観時は事前予約が必要です


「輪蔵」一周回転させることで、経文を全て唱えたとされました


「安国寺 堀 祥岳 住職」ご案内を頂きました

「安国寺へ上る道路付近」

協力:太平山安国寺 住職 堀 祥岳様
出典:高山市ホームページ、飛騨高山観光公式サイト
※コロナウイルス感染症対策として拝観停止中ですが、特別に許可を得て立入・撮影しております

(posted on 2021/8/2)

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