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日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

設立25周年企画展
25th anniversary exhibition

コラム

Column

NO PHOTO NO LIFE ⑩~師と久々の再会 ゲスト プロギタリスト/プロカメラマン福田洋也 様~

僕には写真において師と仰ぐ方が一人だけいる。
歳も40歳を過ぎてからのプロカメラマン人生への転向だった為に、丁稚奉公のような修行と下積みで仕えたわけではないけれども、写真を撮る上において自分の中で死ぬまで変わらぬであろう最も大切だと思っている事を教えてくれた師だ。
それが何なのかは、僕のプロ人生において最も大切にしているモノなので誰にも言わない。

師はハードロックファンの間では知らない人はいないであろうというロックギタリストとしてギターヒーローというもう一つの顔も持っている方で、自分との出逢い自体は写真で師事するよりも随分と前の事である。今回、全国ツアー中の多忙にも関わらずその合間を縫って時間を作ってくれたお陰で約2年ぶりに再会することができた。
そんな師に厚かましくも、自分が連載をさせていただいているコラムにゲストとしての対談を申し入れたところ快く引き受けてくれた。
今回は、久々に一献を傾けながらカメラマンの師として語ってくれた時間のほんの一部をコラムとして原稿に起こそうと思う。

「何よりセンス!」

西田 
師を前にしてテーマは何にしようかとあれこれ悩みましたが、やっぱりカメラマンとは何ぞや?これからのプロカメラマンにとって必要な事って何だろう?って。とにかくそれを師に聞きたいなと。

福田氏
昔はテクニック等、誰しもが持っているものでなくてそこでプロとしてのすみ分けができたけれど、今はカメラが全部やってくれる。そうなるとその先は「センス」しかないんじゃないかな。いまiPhoneでもかっこいい写真が普通に撮れるしSNSだってみんな凄いじゃん。そういう人が更に社カメになったりするんだろうけど、じゃあカメラマンとして何ができるか?っていうところで絶対的に必要なのはセンス。同じ被写体を与えられて、あーそういう撮り方もできるのか!って。被写界深度による前ボケだとか後ボケだとか、、、そういうのはある程度テクニックとして身につくけれど、じゃあその先を更にどう捉えるか?って。そういう引き出しを幾つも持ってないとね。
それと自分の場合は3年前にドローンを導入したんだけれど、ドローンって動画っていうイメージがあるけれど、静止画ももちろん撮れるし。俯瞰的な画が撮れるわけだからそういうのも武器の一つになってたりするかな。
特にこのコロナでカメラマンに対する需要も落ち込んでるなかでやっていく為にはセンスとその引き出しの数じゃないかと思う。

「センスの鍛え方」

西田
もちろん才能や素質の個人差はあるでしょうけれど、そのセンスの鍛え方ってどんな方法があると思いますか?

福田氏
自分の場合でいうと海外のファッション誌なんかを年購読で契約してたりしたな。
世界のトップモデルをトップカメラマンがしのぎを削って撮ってるような、イケイケの写真が沢山掲載されていて、自分がこういう写真が撮りたいと思ったようなモノを頭にいっぱい情報として入れていく。映画でもしかり、抒情的なものであったり官能的なものであったり、綺麗なものであったり、、、そういうシーンを頭にできるだけインプットして、そこから先に自分オリジナルのセンスを作りだしていく。まずは何もないところにはセンスは育たないと思うからね。

~ひと時の対談を終えて~
師との話は上記にご紹介した以外にも、
広告業界における写真需要の現状の話や、
朝一番でフィルムの現像を店でお願いするのと同時に新しいフィルムを買って街を撮り続け、夕方に仕上がったフィルムを取りにいって、出来栄えを確認しつつまた撮って、翌朝また現像に出して、同時にフィルムを購入して、また撮って、、、そんな風に撮り続けた日々の話。
焦点距離50mmで撮る事がなぜ大切なのか?という話やハウススタジオを運営していく際のコストの話、そのスタジオでどのように撮影会やセミナーを仕切っていくのかという話。
シャッタースピード1/10sで撮る夜景ポートレートの話や、駆け出しの頃の3,4年は師でも辛かったという話。使用機材の限界能力まで使いきれ!という話やモデル事務所とのやり取りの話など全てにおいて師の経験から語られる内容の話は、背中を見て憧れた自分にとっては今なお尊い話ばかりだった。

プロデビューして丸3年になろうとしているが、その当初から公に師と仰ぐことにも寛容な心で許してくれて事あるごとに色々な助言を授けてくれた。
自分が師と仰ぐことが、師にとって不名誉にならぬよう少しでもカメラマンとして写真家としてステップアップすることを必死にやってきたことには自負がある。
恩返しにはまだほど遠いが、3年経ってこの所属する日本建築写真家協会の公式サイトで月間コラムを連載させて頂けるようなところまでなんとか辿りついた。

次の再会までに、またできるだけ写真を撮る者として前に進んでいたいと思う。

師に心からお礼を伝えたい。


先日2年ぶりに再会したときのもの

師の今期のツアーで使用されているアー写の1枚

師が撮ってくれた自分

福田洋也氏 ~プロフィール~(写真2枚目)
1985年 ANTHEM 初代ギタリストとしてDEBUT。2010年 ANTHEM 25周年ANNIVERSARY TOURに参加。 ギタリストとして完全復活を遂げた。これを期にギタリストも再開。イベントやRecordingに携わるようになった。また写真家としての活動も目覚しく各種雑誌、Web媒体をはじめ写真セミナー講師としても活躍中。アーティストとして培った感性を活かして描く写真には定評があり、風景・人物写真などを中心に多彩な才能を発揮。
オフィシャルサイト「Girlizm」
http://girlizm.com/index.php

(posted on 2020/11/20)

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