NOSTALGIC JAPAN ⑪三岐鉄道北勢線 三重県 その1
~ナローゲージという貴重な産業遺産に乗車して~
鈴鹿山脈の山々や田園をバックに独特の黄色い電車が走る三岐鉄道は、四日市市北部を起点とする「三岐(さんぎ)線」と、桑名市中心部を起点とする「北勢(ほくせい)線」の2路線がある。
今回は北勢線に乗って三重県いなべ市にある「ねじり橋」と「めがね橋」を取材して来た。
阿下喜駅に停車する黄色の北勢線
北勢線は、三重県桑名市の西桑名駅から三重県いなべ市の阿下喜駅まで20.4kmを結ぶローカル線で、日本では数少なくなった一般的な営業を行う762mm軌間のナローゲージ車両。
北勢線の歴史は三岐線(富田~西藤原)より古く、1914(大正3)4月5日に北勢軽便鉄道として、大山田(西桑名)~楚原間14.5kmの運輸営業を開始したのがその始まりで、三重交通、近畿日本鉄道を経て2014年で100周年を迎える。北勢線は一時廃止の危機に陥ったが、地域住民と沿線市町村の努力により、2003(平成15)年から三岐鉄道北勢線として軌間762mmのまま運行されている。
遠く森林の中から低くうなるようなモーター音が響いてくると、パンタグラフを揺らしながら黄色の北勢線が登場
通称「マッチ箱電車」とも呼ばれているナローゲージ車両
夏目漱石の小説「坊ちゃん」に“乗り込んで見るとマッチ箱のような汽車だ”と軽便鉄道が登場するが、これがまさに「黄色のマッチ箱」。
車輌幅は2110mm。JRの2950mmと比べるとかなり小さい
天井には今ではめずらしい扇風機が設置された車両
「座ると向かい合った人と膝が当たる」とまで言われる車内
かつては軽便鉄道という規格があり、林業が盛んだった時代には森林鉄道や工事用のトロッコ軌道として多く引かれていたようだ。しかし、建設や維持コストがられる抑えられる反面、最高速度や輸送力が不足し、やがて衰退していったと言われている。現在、旅客用として運行している路線は三岐鉄道北勢線と近鉄内部・八王子線(きんてつうつべ・はちおうじせん)の二箇所のみ。
線路沿いの民家の軒や植木の脇をすり抜けてゆく。流し撮りでスピード感を割増しするが、実際はゆっくりと走っている
車輌が小さい割にはモーター音が大きくて結構揺れるので速く感じるが最高速度は45km。実際は平均速度27kmと極めてゆっくり走っており、乗り遅れた学生が自転車で追いかけ次の駅から乗車する、と言う話もあった。
車両の床が低いので、風景が身近に感じられる
たまには都会の喧騒を離れるのも良いと思うが、地元の人にしたらもう少し速く走って欲しいだろう。
ヘロヘロと続く狭い線路
楚原~阿下喜間は自然が良く残っており、まるで大木の森で出来たトンネルの中に入っていく様は、ディズニーランドの「ウエスタンリバー鉄道」に乗っている感じ。西部開拓時代の町に、いや大正時代にタイムスリップしそう。
★その2 ~ねじり橋~ につづく
資料協力・参考資料:
高橋 利尚 氏
宮本 浩義 氏
北勢線とまち育みを考える会 会長 安藤たみよ 氏
first class architect office VISION & DESIGN . 平岡 晋 氏
※このコラムは2015年に「けんせつPlaza コンパネブログ 写真家の目~日本建築写真家協会~」に掲載されたものを再編集しました。
(posted on 2018/12/17)