高橋是清邸(江戸東京たてもの園)
今年六月より新しく日本建築写真家協会員として参加させていただきました。これからよろしくお願いいたします。
柱や縁側の板などにツガ材が使われた総「栂普請(つがぶしん)」造り
当時は高級なガラスが贅沢に使われた
ガラス戸があることで、風通し良く外からの光を柔らかく取り込めた室内
柔らかな外光を取り入れた室内
高い天井とグラデーションが豊かな室内
竹の素材で作られたかわいらしい小さな茶室
普段新築やリノベーションなどの撮影をさせていただいていますが、プライベートでは昔から歴史のある古い建物を撮り続けています。古い建築物は構造としての美しさはもちろんのこと、その空間の中で生活した人の息づかいや、ぬくもりを感じ取ることができます。
第1回目のエッセイで取り上げる高橋是清邸の主は、明治、大正、昭和時代初期の政治家であり、第20代内閣総理大臣として歴史の教科書には必ず登場する人物です。また同時に二・二六事件で反乱軍の青年将校らに撃たれ、命を落とした大蔵大臣としても歴史の1ページに残されています。
この高橋是清の赤坂での住まいが、文化的価値の高い歴史的建造物として小金井市にある江戸東京たてもの園の中に復元されています。この高橋是清邸の特徴は総「栂普請(つがぶしん)」の建造物。柱や縁側の板(縁甲板)などにツガ材が使われています。
柱や縁側の板などにツガ材が使われた総「栂普請(つがぶしん)」造り
もう一つの特徴は格子のガラス障子。当時ガラスは一枚一枚手作りの高級なものでしたが、建物を覆うように贅沢に使われています。今ではところどころ波打っていますが、ガラスに彫られた彫刻が外の光を受けて、歴史を感じる美しい模様を見せています。
当時は高級なガラスが贅沢に使われた
ガラス戸があることで、風通し良く外からの光を柔らかく取り込めた室内
二階は書斎と寝室として使われていました。松竹梅の彫刻がされた美しい欄間が目を引きます。二・二六事件の現場になった二階の間に座っていると、歴史の重みをずっしりと感じることができます。撮影をしたこの日は夏の暑い午後の時間。東京たてもの園にある広い緑の庭園から風が流れてきました。少し薄暗い室内に差し込む光が障子やガラスを通して柔らかくなり、部屋の中を綺麗なグラデーションに変えています。
柔らかな外光を取り入れた室内
高い天井とグラデーションが豊かな室内
高橋是清邸を出て、隣にあるのが陶芸家でもあった宗徧流の茶人山岸宗住(会水)が作った茶室「会水庵」。とても立派な竹の中柱が目を引きます。
竹の素材で作られたかわいらしい小さな茶室
江戸東京たてもの園には、高橋是清邸以外にも建築家として有名な前川國男邸や、ドイツ人建築家ゲオルダ・デ・ラランデにより大規模に増築された三階建ての洋風建築などたくさんの復元された建築物を見ることができます。
これからの紅葉の季節、休日に黄色く色づく小金井公園を散策しながら、歴史観豊かな建築物に親しんでみるのも良いのではないでしょうか。
(posted on 2018/10/24)
Writer: 村山勉