島根県 JR西日本 木次線 出雲横田駅
以前友人の編集者が「ローカル線の駅には寂寥感があるよね」と言っていた。
字面での寂寥感は理解出来るのだが、体感としての経験は未(いま)だ出来ずにいた。
今回訪れた奥出雲、木次線出雲横田駅22:23着最終列車。降車は私一人。そのときプラットホーム上で突然に体感として彼が言っていた寂寥感が舞い降りた。
感とは理解するものではなく体感し実感へと移行するものである。感の多くは感じえないままに通り過ぎ見過ごしているだけだ。そんな小うるさがられる思考の元、まだまだ感受出来る思考、感性は衰えてなく進化さえしていると自己本位の思考に半ば呆れつつ納得すらした。どうぞ笑えば笑え。
1934年開設のこの駅舎は神話の国出雲に相応しい入口の上部にしめ縄飾りが施してある。本社の出雲の大社との関連は不勉強ながらこのしめ縄を目当てにこの地に来たことは間違いない。屋根は入母屋、壁は校倉造となっている。
二度と来ることはないだろうこの駅舎、二度と泊まることはないだろう駅前の商人宿の布団での就寝、共同浴場、近年には経験のない環境だ。でも帰京して件(くだん)の友人に寂寥感の話が出来る楽しみを思えばそれも良としよう。
このあたりは古代よりたたら技法での製鉄が盛んな地域で多くのたたら遺構が残っている。此方(こちら)にも興味がそそられるが今回は駅舎の撮影に専念することにした。
この後数日間はこの地域の駅舎を訪ねるが、さらなる寂寥感を、いやもっと違った同意語の納得できる新しい受感との出会に期待しよう。
余談になるがこの駅の隣には名著「砂の器」の事件解決の重要な糸口となる地域の亀(かめ)嵩(だけ)駅が有り、松本清張ファンの聖地になっているが、同書は長編のため持参せず出雲風土記なるものを今回は手にし、奥出雲でのたたら職人たちの勃興に興味を募らせ、最後は出雲蕎麦なるものを食し締めとしよう。
(posted on 2024/11/23)