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日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

新潟県 JR東日本 信越本線 三条駅

新潟県三条市にある三条駅に到着したのは、夏の午後が静かに終わりを迎える頃でした。
青空が広がり、穏やかな風が心地よく頬を撫でていきます。

明治31年に開業したこの駅は、長い歴史を経てもなお、その趣深い姿を保ち続けています。
駅舎に近づくと、まず目に留まるのは、重厚感のある瓦屋根です。
黒々とした瓦が丁寧に敷き詰められ、風格ある佇まいは、駅の歴史の深さを物語っています。

写真からもわかるように、駅舎の外観は新しい素材で改修されていますが、木造の柱や梁がその存在感を放ち、
時が止まったかのような静けさを感じさせます。この静寂と歴史の融合が、三条駅ならではの魅力です。

1番ホームの南端には、明治45年に建てられたレンガ造りのランプ小屋が、ひっそりとその姿を留めています。
この小さな建物は、かつて駅の灯りを支えていた歴史の証人です。
古びたレンガと瓦屋根が作り出す風景は、訪れる者を過去へと誘い、歴史の重みを感じさせます。

プラットフォームに立つと、かつての2面3線のホームが広がっていたことを想像させます。
現在は中央の線路が撤去され、2面2線の構造が残されていますが、その簡素さの中にも、駅の変遷と長い歴史が静かに語られています。

駅の周囲には、古くからの市街地が広がっており、少し歩くと五十嵐川を渡る橋があります。
その先には、歴史を感じさせる旧市街地の町並みが広がっており、昔ながらの生活の営みを垣間見ることができます。
駅前には、交番や商店、食堂を兼ねた旅館が立ち並び、ここでの人々の生活が今も続いていることを感じさせます。

観光としても魅力的な場所です。駅から近くにある本成寺は、法華宗陣門流の総本山であり、その荘厳な建物群は訪れる者を圧倒します。
特に節分の鬼踊りで有名なこの寺院は、地元の人々にとっても重要な存在です。

夕暮れ時、ホームから見渡すと、新潟方面へと続く線路の先に広がる田園風景が目に映ります。
この静かな駅の風景と、古びたランプ小屋のコントラストが、訪れる者の心を引きつけて離しません。

この日の撮影を通じて、三条駅が持つ独特の魅力を再確認しました。
歴史ある駅舎と、そこに刻まれた時の流れ、そして周囲に広がる穏やかな風景。

そのすべてが、三条駅という場所の美しさを物語っています。
この駅に刻まれた時間の流れは、これからも鮮やかに人々の記憶に残り続けることでしょう。

(posted on 2024/8/13)

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