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日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

新潟県 えちごトキめき鉄道 日本海ひすいライン 谷浜駅

新潟県 えちごトキめき鉄道 日本海ひすいライン 谷浜駅

谷浜駅に到着したのは、夕日が日本海に沈みかける時間帯だった。
快晴の空は澄み渡り、西陽が強く照りつけている。まっすぐに差し込む夕日が、
駅舎とプラットフォームを黄金色に染め上げ、その美しさに思わず足を止めた。

海からの風が心地よく、夏の暑さをほんの少し和らげてくれる。
駅舎は木造の平屋建てで、開業当時からの姿を今も残している。
その古びた木材は風雨に晒され、所々に錆やひび割れが見られるが、逆にそれが歴史の深みを感じさせる。

長年の風雪に耐え続けた駅舎は、この土地の時間の流れを体現しているかのようだ。
駅舎の中には、かつての賑わいを偲ばせる出札口が、ひっそりと佇んでいる。

夕陽は低く、駅の全体を柔らかく包み込んでいる。
プラットフォームに立つと、真っ直ぐに伸びる線路が西へと続き、夕日に向かって消えていく。

1番線には糸魚川方面行きの列車が停まっているが、車内は静かで、乗客の姿はまばらだ。
使用されなくなった2番線の錆びたレールが、かつての活気を思い起こさせる。

この駅からは日本海が望める。
写真を撮るためにカメラを構え、シャッターを切るたびに、夕日の光と影が絶妙なコントラストを生み出していた。

駅の向こうに広がる日本海は穏やかで、水平線に沈む太陽が海面を赤く染めている。
この景色は、時間が止まったかのような静寂と共に、谷浜駅の美しさを一層引き立てている。

駅の外に出ると、昔ながらの家々が軒を連ねている。
郵便局や商店がぽつりぽつりと見えるだけで、夏の夕暮れに人々の気配は少ない。

しかし、その静けさが、この場所の魅力の一つでもある。
どこか懐かしさを感じさせる町並みが、駅の歴史とともに長い年月を歩んできたことを物語っている。

谷浜駅の目の前には、「たにはま海水浴場」が広がっている。
この海水浴場は、現在でも夏の季節になると多くの人々が訪れる場所として親しまれている。
砂浜には海水浴客の姿が見られ、夏の風物詩として地元住民や観光客にとって重要な存在だ。

かつて「かもめ号」や「さざなみ号」が、夏の臨時列車として谷浜駅に乗り入れ、多くの家族連れがこの海岸を目指していたという。
その頃の賑わいが、今では想像もつかないほど静かだ。

駅から少し離れた場所に、「谷浜鉄見デッキ」がある。
地域住民と鉄道ファンが協力して作り上げたこのデッキは、絶好の撮影スポットだ。

夕陽を背に走る列車と日本海が織りなす景色は、まるで一枚の絵画のようだ。
ここから見る風景は、谷浜の美しさと静寂を存分に感じさせる。

谷浜駅は、今も変わらずにこの地で人々を迎え続けている。
歴史の中で幾度も変遷を重ねてきたが、その佇まいは、時代を超えて人々の記憶に残り続けるだろう。

この夕暮れに見た光景は、私の記憶に深く刻まれ、いつまでも色褪せることはないだろう。
駅舎とプラットフォーム、そして日本海を背景にしたこの美しい夕景は、谷浜駅が持つ独特の魅力を物語っている。

(posted on 2024/8/13)

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