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日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

創立50周年写真集
50th anniversary exhibition

コラム

Column

奉還町、油絵のような時間

岡山市北区、奉還町。
昔ながらの商店街を歩いていると、ふと足が止まる店がある。
「custom shoes planning BUHI」。ガラス越しに覗いた店内の景色に、思わずお店に飛び込んでいた。

棚にはワックスの缶、革の切れ端、年季の入った靴型。
奥の壁には作業中の一足がぶら下がり、その手前で、職人さんが黙々と靴と向き合っていた。
眼鏡の奥の視線は、手元だけに注がれている。
その手が、私は好きだ。

道具を選ぶ指先の迷いのなさ。
革を撫でる手つきのやさしさ。
何十年もかけて、身体に染み込んだ動きなのだと思う。

棚の並びも、置かれたモノひとつひとつも、きっと最初からこうだったわけではない。
毎日そこに立ち続けた時間が、少しずつ積み重なって、今の佇まいになった。
乱雑なようでいて、実は職人さんにしかわからない秩序がある。
そこには、その人の生き様と美学が、そのまま形になって残っている気がする。

ガラスの反射と、奥の照明の影と、棚に積まれたモノたちの色。
何層にも重なって見えるその景色は、まるで油絵の具を幾重にも塗り重ねたようだった。
一枚のガラスの向こうに、その人の時間そのものが閉じ込められている。
そんな気がして、しばらくその場を動けなかった。

建築を撮っていても、結局いちばん惹かれるのは、そこに宿る人の気配なのかもしれない。
職人さんの手と、積み重なった佇まいと、その奥にある美学。
これからも、そういう時間に出会うたびに、カメラを向けていきたいと思う。

(posted on 2026/9/19)

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