Old School Japan ⑩ 小海線 甲斐大泉駅

日本建築写真家協会 創立50周年企画展 「古今駅集 しらずの駅舎」用に撮り下ろした写真だが、残念なことに、そのほとんどが不採用となってしまった。そんな写真たちに追悼の意を込めて随時コラムで発表して行くことにした。
小海線は小淵沢駅(山梨県)と小諸駅(長野県)を結び、八ヶ岳の南東を横断する路線。甲斐駒ヶ岳、北岳、八ヶ岳、そして富士山、日本を代表する山岳を望む事が出来る。
幼少期、初めて走行する蒸気機関車C56を見たのも小海線だった…と思う。セピア色に変色したモノクロ写真がそう語っている。たぶん“鉄”の道にハマったのも小海線の仕業に違いない。
甲斐大泉駅の周辺は、北海道の根室本線の車窓から眺めた美しい景色と似ている。
きっとカラマツやシラカバの林がそう見せたのだろう。と思ったら「カラマツ」は元来、北海道に生息していた樹では無いと言う。開拓時代に長野県から移植されたものがはじまりらしい。
誰もいない甲斐大泉駅のホームに佇むと、汽笛を鳴らしながらホームへ進入してくるC56の姿が蘇る。
ふいに北原白秋の「落葉松」の一節が浮んだ。
からまつの林を過ぎて、
からまつをしみじみと見き。
からまつはさびしかりけり。
たびゆくはさびしかりけり。
(posted on 2025/9/23)