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日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

創立50周年企画展
50th anniversary exhibition

コラム

Column

街歩き(42)アッシジ(イタリア)

 暫くはこの夏に旅したイタリアの街歩きにお付き合い願おう。

 ウンブリアの緑の平原を見下ろすスパーシオ山の麓にへばりつくようにアッシジの町はある。
12世紀、この町の豪商の子息として生を受け放蕩無頼の生活を謳歌していた若者を敬虔な宗教家へと導いたのはこの町から望めるウンブリアの自然だったのだろうか。
名前はサン・フランチェスコ。フランチェスコ修道会の開祖である。
ちなみに日本でも有名なフランシスコ・ザビエルはこの会派の修道士として布教目的で日本を訪れた。

 キリスト教徒にとっての一大聖地であるこの町には過去に三度訪れているが、以前は聖地に相応しい宗教色の濃い聖都であり、町を歩くとフランチュスコ会独特の僧衣に身を包んだ修道士を見かけたが、今回はあまりにも多くの観光客の中からは見つけることが出来なかった。
とはいえ夜になると以前のような聖都に相応しい静寂を取り戻していた。

 町の4分の1を占める1230年に完成した巨大なサン・フランチェスコ教会は上下2層の構造で、下の教会は薄暗く天井も低く、S・マルティーニ、チマブーエのフレスコ壁画に囲まれた荘厳な空間にサン・フランチェスコの棺が安置されている。
一転1253年完成の上の教会に上がるとそこは明るく、ジョットのフレスコ壁画に覆われ28の場面に分けてサン・フランチェスコの生涯が描かれている。内陣全てがジョットの壁画といっても過言ではない。
ジョットのファンにとってもヴェネツィア近郊の町パドーバのスクロヴァーニ礼拝堂と並び称される一大聖地でもある。

 町の起源はローマ時代にまで遡り、中心のコムーネ広場にはローマ時代のミネルバ神殿の一部も残っている。
背後の丘の頂には中世の大城塞がありアッシジの町を俯瞰で望める。
その他にはサン・フランチェスコ関連の多くの教会もありキリスト教徒にとっては一度訪れて見たい聖地なのも頷ける。

 アッシジはあまり馴染みのない町かもしれないが、フレンツェからは2時間強で行く事が出来、日本では体験出来ない聖都の雰囲気を味わうのには一興かもしれない。
その節は宿泊代が高騰しているフィレンツェを避けこの町に宿泊し、観光客がいなくなった中世そのままの町のそぞろ歩きを薦めたい。

(posted on 2025/9/9)

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