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日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム

Column

NOSTALGIC JAPAN ㉕「旧金龍堂書店ビル」 東京都北区 

いつからだろうか。気が付いたら「週刊新潮」のCMがテレビから消えていた。子供の頃、西陽に照らされた部屋の片隅で、一人ぽつんとテレビを見ていた記憶がある。『村まつり♪』のBGMに乗って、女の子のナレーションで「週刊新潮は明日発売です」と言うだけ。なんだか寂しい気分にさせられるCMだったが、未だに脳内を駆け巡る。50才以上の方は記憶にあるかも知れないが、このCM、昭和31年からテレビで放映されていて、初期のBGMはピアノの演奏による「赤とんぼ♪」が流れていたらしい。

近所の床屋さんの待合で、そこに積まれた雑誌が「週刊新潮」だと分かったのは小学生になってから。子供心に表紙の素朴な絵が気になっていた。

小学生の高学年になると自転車に乗って赤羽にある老舗模型店へ遠征する日々が始まる。勿論「ガンプラ」を購入するためだ。ガンプラブームの時は、毎週日曜日になると、客が並んでガンプラを買った、そんな時代があったのだ。
ひたすらR122を走り、強風に煽られながら新荒川大橋を渡ると長い坂道が始まる。そのドン付きの交差点まで来るとモザイク壁画が目に入る。あとちょっとで模型店にたどり着く。その建物が「金龍堂書店」であり、迫力のある壁画と「週刊新潮の表紙」が谷内六郎氏の作品だと分かったのは、まだ先の話。

表参道と青山通りの交差点に立つと、3階建ていっぱいに描かれた大きな壁画が目に入る。街のシンボルともいえる老舗「山陽堂書店」だ。高校生になったある日、どこかで見覚えのある作風が気になり、まじまじと見ていると、右下に「ROKU」と書いてある。赤羽のあの建物の壁画にも確か「ROKU」という文字があったな。店員さんに聞いてみると「故・谷内六郎氏の作品」だと教えてくれた。しかも、現在は二代目だという事も分かった。

私の知る限り、街角に現存する谷内六郎氏作のモザイクタイル壁画は、八王子駅前にある「くまざわ書店」。「世田谷区立千歳台小学校」 「新宿区 新潮社別館」。
ビルの建替えで姿を消してしまった壁画も多いのだろう。

谷内六郎氏の作品を観ると、日本人の「心のふるさと」と呼べるような、昭和の懐かしい風景が蘇ってくる。気になる人は「谷内六郎館(横須賀美術館)」へ。

(posted on 2020/5/29)

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