日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム
column

ベンメリア 塚田智一

この度新規入会させていただきました塚田智一と申します。
皆様に支えられ、写真を生業としてなんとか19年を過ぎました。

今回、何が私の建築撮影の始まりだったのかと初めて振り返るような機会となりました。
激務であった写真館から独立してとにかく何か自由なことをとバックパッカーで訪れた2002年のカンボジア遺跡群がまさにそれでした。
当時バックパックの半分はXRAYガードバックに入った山盛りのフィルム、更に予備機とレンズで占められ、どうしようもなく重い。安いだけで選んだタイからの国境越え陸路移動のワゴンは窓なし、、対向車とすれ違うような時はえらいことになる。それに加えて慣れない雨季のジャングルと一日中続く猛暑にやられてヨロヨロとしていましたが、いざ遺跡の入り口に着くとその追憶の塊のような巨大な遺跡群に圧倒され気がつくと入り口の門だけで何本もフィルムを消費していました。。

特にベンメリア遺跡ではまさに初めての感覚、感動に打ち震えた記憶があります。
当時のベンメリアは、湿った深い森の中で修復が施されないままに放置され、ひっそりと静かな佇まいを見せていましたが、原形をとどめないほど崩壊がひどく、苔むし、ほとんどが瓦礫の山と化していました。未だ開かれていない森の細い道脇には、地雷危険の杭が何本も刺さり旅行者が気軽に訪れるような場所では無いことがわかり少し緊張していました。
しかしいつの間にか現れた現地の子供達に先導されながら、穴をくぐり、屋根を登り、光の届かない回廊をたどる、、そして天井をつたってようやく一周する頃には汗だくのドロドロになって夢中で撮影していました。
絶妙なバランスを保って未だに崩壊しない屋根や、まさに髪一本通らない壁の継ぎ目、柔らかな曲線をもった彫刻、そしてそれらをど真ん中からしなやかに突き破る自然。
当時の設計士はどんな気持ちで造営したのだろう。
いにしえの文明の建築が900年を経て人を魅了することを知り、私に建築への興味と面白さを教えてくれた最初のインパクトとなりました。

あれからバタバタと撮影をしている間に時間が過ぎましたが、これからも一つひとつの建築の魅力を発見できる撮影者であるよう精進したいと思います。

どうぞよろしくお願い致します。


2008年に再度訪れたベンメリアの一部。
ジャングルは開かれ料金所とゲート、木製の通路が設置されていたが、未だ修復には至らず。

(posted on 2019/5/28)

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