日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム
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街歩き (20) アーメダバード(インド) 堀内広治

暫く欧州の街歩きが続いたが今回のコラムでは中国と共に今やアジアでの経済発展の雄インド、その北西部グシャラード州の中心都市アーメダバードについて書いている。
人口600万人弱、13世紀にアフマド・シャー1世により建設されイスラム教徒の都市として発展し、その後ムガール、ヒンズーの国々に征服された変遷を経て今ではその影響下、歴史的建物が数多く現存するインド7番目の人口を有する大都市だ。
5度目の訪問のインドであるが、今までに訪れた有名都市や観光地とは趣を異にした経済都市と呼ぶに相応しい活気にみなぎった都市でもある。
住民の多くがイスラム教やジャイナ教を信仰し、街には多くのモスク、装飾が美しいジャイナ教の教会を目にすることが出来、この地方に数多く見られる階段井戸と呼ばれている風変わりな構造物にも興味を引かれた。高温多湿に対する生活の知恵とも思われるこの井戸は、地下水脈のある地下30メートルまで階段で降りていき飲料水にし、水面付近では常に気温が20度程に保たれ、涼をとるのには最高の場所だ。
町の郊外にあるサルケジ・ロサはル・コルビジェがインドのアクアポリスだと紹介し、君主とその家族の廟所とモスクが併設され、そのスケールには圧倒される。

インド独立の父と呼ばれるガンジーはこの地に修行場を設け、独立運動の発火点となった「塩の行進」の出発点となり、その跡地には多くのインド人観光客が訪れている。

又、建築愛好者間では建築の街とも呼ばれ、ル・コルビジェの繊維業会館、サンスカル・ケンドラ美術館、ルイス・カーンのインド経営大学をはじめ多くの著名建築家の作品が堪能できる。
そんな中今回の旅の目的は、この地に事務所を構え、2018年度のブリッカー賞受賞者でもあるインド建築界の重鎮バルクリシュナ・ドーシ氏の作品撮影で訪れた。
我々が取材依頼をした直後にブリッカー賞の発表がなされ正にタイムリーな取材となった。

先ずドーシさんの代表作の一つであるバンガロールに建つインド経営大学の撮影を終え、空路4時間かけてアーメダバード入りしたが、予想通りの酷暑で夜半の到着時でも気温は優に40度を超えていて翌日からの撮影を思うと複雑な気持ちになった。
市内外に点在する氏の作品、サンガト、ガンディー労働研究所、グファ美術館、インド学研究所、タゴール・メモリアル劇場等を1週間ほどかけ撮影し、今回は氏のご好意でご自宅の撮影の許可まで頂き充実した撮影時間を過ごし、日中の酷暑を忘れさせてくれる感がしたが、その中でも一番の感動はドーシさんの人柄に魅了されたことに尽きるようだ。
インドを代表する著名建築家で優れた教育者でもある氏への想いを述べるのは若輩者の私は控えさせて頂くがドーシ教の熱烈な信者になったことは間違いないだろう。
私自身もこの先の人生を考える年齢に達しつつあるが、撮影時の年齢が92歳のドーシさんを見ていると、如何にきれいに、格好良く年齢を重ねていくかの術を少しばかり与えてもらったような気がし、この後、未だ未だやり残した事の多くと真摯に向きあい謙虚に歳を重ねて行かねばならない気がしてくる。

海外取材に出る楽しみの一つは、滞在している街に繰り出し自身の勘を頼りに如何に素晴らしいお店を見つけ出すかに尽きるが、今回の旅では想像以上の暑さを言訳に撮影時以外の食事は全てホテル内で済ませてしまう腰抜け取材になっていた。
そこで最後の夜ぐらいはと反省し酷暑の街に繰り出し、町一番と評判のカレーレストランに同行の編集者と出かけてみたが、日本のカレーチエーン店で出されるシンプルなカレーが恋しくなったのは私だけではなかったようだ。

(posted on 2019/4/7)

堀内広治

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