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日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム

Column

街歩き (11) アユタヤ(タイ) 

旅の印象は訪れた場所での非日常の体験で随分と左右されるのも旅の楽しみの一つと言えよう。
タイの首都バンコクの北方約100キロ弱に位置する古都アユタヤも思い出深い町の一つだ。その体験談は後にまわすとしてアユタヤについて簡単な概略から始めよう。
1351年、シャム族のウートン王によって開かれた古都アユタヤは、チァオプラヤ川とその幾筋もの支流に囲まれたアユタヤ島を中心に栄え、別名を東洋のヴェニスと呼ばれ、約400年間、1767年にビルマ軍によってほろばされるまでの栄華を誇った。16世紀中頃からは多くの日本人も居をかまえ8千人程の日本人街も形成され、日本史上の山田長政なんて人物もこの地で居を構えアユタヤ王朝の官吏として活躍していた。

現在のアユタヤはその栄華の一端を広大な遺跡巡りによってしか見る事が出来ないが、この地域の遺跡巡りの観光地としては、ヴェトナムのフエ、カンボジアのアンコール遺跡群に決して引けを取らない一級品の観光地だ。過去に2回訪れているが、そろそろこの地での非日常の体験談を語ることにする。

通常バンコクからアユタヤへの交通手段としては、タクシー、船、鉄道、バス等があるが、私たち撮影隊はなんと空軍のヘリコプターで古都アユタヤへ向かった。
以前にもスリランカ、フィリピン、パキスタンで空軍のヘリに搭乗した経験はあった。特にスリランカでは戦闘用のアパッチにも搭乗した。話が逸れるがこのスリランカ空軍のアパッチへの搭乗時はバルカン砲に足をかけ身体を引っ張り上げて機内に乗り込む。今思い出しても最高の思い出の一つだ。この時にはもう一つのプレゼントが有ったがコラムでの文章にするのにはいささか憚れるので次の機会にしたい。

さて、アユタヤに話を戻すと、空軍ヘリでの訪れもなかなか経験できないが、述べたかったのはバンコクへの帰途の方法だ。今度はなんと船外機付きの小さな和船のような船でバンコクへ向かった。
通常は1時間ほどでの行程だが、船のサイズが小さいのを幸いに、途中の水上生活を営む人々の暮らしを見たく、小さな支流、運河にも分け入り、洗濯をする人、水に飛び込み楽しんでいる子供たち、水上マーケット等、なかなか一通りの観光では見ることが出来ない人々の暮らしぶりを垣間見た。
乗船した船の喫水線が低く、船べりからは優に水面に手が届くし、なんといっても良かったのは生活者との同じ目線で風景を眺められ、水上家屋の内部で私たちに手を振っている住人達にも手を振ってこたえる事も出来た。半日かけてのバンコクへの船旅だ。

その後、バンコクは何度となく訪れたが、このアユタヤへの撮影行ほど感動した場面には遭遇できなかった。
近年のバンコクは高架鉄道、高層ビル群、ハイテクな飛行場と東南アジア諸国の中でも目を見張る発展を遂げている。
反面、郊外に出向けばいつでも見る事が出来た、古き良き時代にタイムスリップしたようなタイの人々の日常が見られなくなったが、これも発展途上の国の姿かと受け止めている。

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(posted on 2018/8/15)

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