日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム
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NOSTALGIC JAPAN ⑧「マリコ眼鏡店」 中野区中野  海老原一己

ネットで丸メガネを調べていたら、偶然目にしたのが「丸メガネ研究会」。覗いてみると丸眼鏡に関するウンチクが盛沢山。「何も考えずに丸メガネをかけると、意外と似合わない人が多い。実は丸メガネほどレンズの大きさ、顔の大きさ、目と目の距離などの調和が必要なメガネはない」と謳っているではないか。丸メガネ研究会に所属している店を探したら「マリコ眼鏡店」が目についた。店名にマリコ?店主が真理子さんなのか?
マリコ眼鏡店は中野サンモール商店街を入って直ぐ左手にあり、昭和7年開業以来、地元の人たちに愛されてきた。
中野サンモール商店街は1958年(昭和33年)に現在の原型となるショッピングアーケードが完成したそうだ。現在のアーケードは1998年に改装され、アーケード全体に自然光を取り入れた明るい商店街を作り出している。真っ直ぐ延びる224mの商店街の突き当りには、ザブカルの聖地、オタク文化の発信地と呼ばれる中野ブロードウェイがある。
店内に入るとワクワクするくらいに沢山の丸メガネがディスプレイされている。とりあえず、手前にあったものをかけてみると、全く似合わない。その隣もかけてみたが、これも意外としっくりこない。本当だ。
「丸メガネの玉型サイズをどう選ぶか?と言う質問ですが、 玉型(レンズ)が大きくなればなるほど、コミカルな印象が出てきます。おおよそ玉型サイズを42ミリ以下で抑えると、三枚目的な印象は薄くなり、38~42mmくらいの大きさですと、昔の学者的なイメージになります。丸メガネを掛けて正面から見て、瞳孔中心の位置が、左右それぞれのレンズの(水平方向における)中央よりも、耳側に瞳孔中心の位置がずれていると、外見上不自然な感じがするし、装用者自身の視界においても、側方のフレーム視野の広さの点で不満を感じがちです」と、スタッフが丁寧に説明してくれた。
また「丸メガネには、玉型の横と縦のサイズがまったく同じになっている「真円」と、一見まん丸に見えて、実は横よりも縦をやや短くした「楕円(疑似真円)」があります。真円だと目の錯覚でやや縦長に見えますがより昔風になります。ちなみに昔はすべて真円でした。」
なるほど、「丸メガネ」は意外と深いな。
マリコ眼鏡店三代目店主の鞠子潔(まりこきよし)さんに伺ってみた。

「小さな眼鏡店ですが、本当に多くの人が関わっていると思います。
我々店の人間やお客様だけでなく、多くの業者、眼鏡店の仲間、商店街など地域の人々、眼科の先生方…。
それも祖父の代から考えると90年近くですので、私も数えられないぐらい多くの人の中で当店は支えられてきました。仕事としては1本1本眼鏡を作るということの積み重ねでしかありませんが、今申したことを忘れずに、少しでも多くの人たち
のお役に立てればと思っています。
 
また、眼鏡作りに関しては、眼鏡という商品を販売するというより、お客様の「見ること」に関わる生活を支えることを念頭に置いていければと思っています。
自分でも難しいと思って作った眼鏡を具合良く使っているとのお礼を言われたときは、ほっとするのと嬉しいのとでメガネ屋をやっていて良かったと思います。
また、特殊なものでなくても、当店で作った眼鏡を掛けているのを拝見すると嬉しいです。その方の生活のお役に立っていることが実感出来るからです。
 
正直に言うと、若い頃はそれほどメガネ屋の仕事が好きではありませんでした。
メガネ屋の喜びを理解できたのは、やっとこの頃です。
長く続けないと分からないことってありますね。」

撮影している間にも、老若男女、次から次へとお客さんが訪れる。
地元の人に愛され多くの人が利用する“駆け込み寺”の様なメガネ屋さん「マリコ眼鏡店」。なんとも居心地が良いメガネ屋さんだ。

(posted on 2018/8/1)

海老原一己

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