日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム
column

NOSTALGIC JAPAN ⑦大隅横川駅 鹿児島県霧島市 その1 海老原一己

笠沙美術館

鹿児島県南さつま市へ。
日本全国津々浦々どこへでも撮影に行くのだが、その中でも特に好きな景色が、ここ「笠沙美術館」から望むビュー。笠沙町は薩摩半島の南西部の南さつま市にある。
野間半島から国道226号線に沿って坊津に向かう途中、沖秋目島を望む黒瀬の高台に笠沙美術館は在る。

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屋上デッキからは東シナ海に浮かぶ沖秋目島(ビロウ島)が望むことが出来る
遠くには大隅諸島の島々が見える

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パティオからのビューは絵葉書で切り取ったような風景

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三陸のリアス式海岸も素敵な景色だが、鹿児島・熊本・長崎に続くリアス式海岸も素晴らしい景色の連続

霧島山麓丸池湧水

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隣の肥薩線「栗野駅」周辺には、日本名水100選に選定された「霧島山麓丸池湧水」(鹿児島県姶良郡湧水町)が在る
透明度の高い池の底からは砂を押し上げながら湧出する様子が確認出来る

大隅横川駅

さて、以前から鹿児島県へ行ったら是非一度観たいと思っていた建物が「大隅横川駅」。
大隅横川駅は、鹿児島県霧島市横川町にある肥薩線の完全な無人駅。

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駅舎は2006年10月、百年以上前の姿を残し当時の建築構造を伝える重要な建造物として国の登録有形文化財に登録される。駅舎は平屋だが、高さがあるので実寸よりも大きく見える。その割には窓が小さいので絶妙なバランスとなっていて、正面から見ると、凛とした佇まいが歴史の重みを醸し出している。

桁行18m、梁間7m、木造平屋、切妻造、平入で、南半に待合、北半に事務室を配し、東側にはプラットフォーム上屋を付ける。同年代の同沿線駅舎と平面形式を同じくし、同時に多くの施設を必要とする鉄道建設の性格を表し、当時の近代化の一面が窺える。

※文化庁 国指定文化財等データベースより抜粋
※隅横川駅概要
木造平屋、瓦葺、建築面積134㎡
所在地:鹿児島県霧島市横川町中ノ39-1
登録有形文化財(建造物)

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桟瓦葺きの切妻屋根の下見板張り
待合室とホームには下屋が取り付けられている

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駅前の円筒形のポストは、駅舎の雰囲気に溶け込んでいる。
通常、駅の出入り口には、自動販売機や電話ボックスが置かれたり
又は至る所に不要なポスターが貼られているが、この駅には一切そのようなモノは無い。
木造の駅舎をそのまま残し、清掃し、不要なポスターを剥がしすっきりさせた。朽ちた板を替えるにとどめた結果、わずかな予算で凛とした駅に生まれ変わったと、通りすがりのおじさんが語っていた。

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入口に掲げられた駅名板

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JR肥薩線は八代駅(熊本県八代市)と隼人駅(鹿児島県霧島市)を結ぶ124.2kmの全区間非電化のローカル線

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待合室の天井は竿縁天井

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真ん中のラッチは金属製のようだが両端は木製ラッチが残っている

改札口を通り抜け駅舎の中に入ると、出札口や手荷物受付用の窓口は木製のまま
大きく改装された様子はない。待合室には縦羽目板張りの腰壁と開業当時から使われている長椅子が残っており、使い込まれた「木」の空間がとても心地良かった。
同時に無人駅となった今、駅舎内はがらんして少々寂しげな雰囲気が漂っている。
また、1世紀もの歳月が気付き上げた、独特の味わい深い空間と、人々が大切に使ってきた温もりを感じ取ることが出来た。

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縦羽目板張りの腰壁と漆喰の壁に、灰色の瓦屋根

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築百年を経過した駅の風格を見せる木造建物
戦後の旧国鉄時代から主要な交通手段の根拠として栄えるが
自動車の普及などにより昭和61年(1986年)11月1日より無人駅となる

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ホーム上の柱には第二次大戦中に米軍飛行機の機銃掃射で撃ち抜かれた痕跡が残っている
駅の近くに建設中だった機関車整備工場が標的にされたものと言われている

その2へつづく

(posted on 2018/6/4)

海老原一己

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