日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム
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街歩き (5) エルサレム(イスラエル) 堀内広治

最近首都移転問題で新聞紙上を賑わしているエルサレムには20年程前に旅をした。当時は入国するのも大変で、中東諸国の入国記録がある私のパスポートでは入国出来ず、新たに1回使用のパスポートを外務省に依頼しそれで入国した。その為、数日前までヘルシンキに居たが一度帰国し新たなパスポートでのパリ経由の入国を強いられた。

飛行場のあるテルアビブから一時間、標高800メートルに位置する古都はヨーロッパの街並みと何ら遜色のない近代都市だが、オールドエルサレムと呼ばれる旧市街は高い城壁に囲まれ、東西南北を宗派ごとに4分割された宗教都市だ。不思議なのは常に争いが絶えない異教徒同士がこの狭い旧市街では何の問題も無いように日常を過ごしている。

キリスト教徒がキリストの受難を体感すべく十字架を背負いヴィアドロローサをゴルゴダの丘へと上る傍らをイスラム教徒が礼拝に通い、ユダヤ教徒があの独特な風貌で何食わぬ顔で歩いている。さすがに聖地での諍いは御法度なのか?不思議な体験をした思いがよみがえる。

この旅の目的はヨルダン川西域のエリコの郊外に竣工した病院の撮影だったが、その後のパレスチナ紛争で破壊され痕跡すら無いらしい。世界で一番古い町と言われているエリコに滞在し町の空気を感じて見たい気持ちもあったが当時は治安も悪く片道一時間の移動を強いられた。エリコの町は死海に近く標高で言えば-400メートルに位置する。よって周りの熱波がこの辺りに集中し優に50度の気温を表示する。遠くに目を向けると陽炎越しにヨルダンの荒涼とした砂漠が望める。エルサレムからは毎日高低差1200メートルの移動である。

話しをエルサレムに戻すが三大宗教の聖地はユダヤ教の「嘆きの壁」キリスト教の「聖墳墓教会」イスラム教の「岩のドーム」をさすが「岩のドーム」は異教徒の入場は許されない。「嘆きの壁」では多くの信者が祈りを捧げる光景を目にする事が出来、キリストが処刑されたゴルゴダの丘に建つ「聖墳墓教会」でも同じような光景を目にできる。
違和感としては映画等で何度も目にしたゴルゴダの丘は荒涼としたイメージが強いが、その丘に建っている教会は民家の家並みの中から忽然と現れていささかの興ざめ感は拭えない。そうは云いながらも教会の奥深くキリストが処刑された処に佇むと得体の知れない何かを授けられたような気がしたのを思い出す。

昨今にわかに中東情勢も不透明になってきたが、エルサレムはもう一度訪れたい街の1つには変わりない。
観光という言い方が正しいとは思わないが、多くの日本人が国内の神社仏閣を詣でるような気持ちで訪れる街なのかも知れない。

最後にイスラエルからの出国時の笑い話?を1つ。
滞在時にケニアの米大使館爆破、テルアビブでもアメリカ政府関係の建物爆破が相次ぎ出国時のセキュリティ検査の物々しさには閉口した。特にエリコに通っていた私には厳しく、三脚を全部バラされ最後には下着一枚での検査まで受けた。今では笑い話で済ませるが当時は生きた心地がしなかった。やっとパリ行きのAF便にたどり着いたときには出発時間は既に過ぎていた。機中では口にしたワインのおかげで気がついたときにはパリに着いていて五時間も熟睡していた。その後も機中でこんない熟睡した事は記憶に無い。

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(posted on 2018/2/8)

堀内広治

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