日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム
column

NOSTALGIC JAPAN ③「天ぷら定食ふじしま」 福岡県北九州市小倉 海老原一己

魚町銀天街の外れにある「天ぷら定食ふじしま」さん。
通称「ちか天」(地下にある天ぷら屋の意味)は、創業60年。
小倉で知らない人はいない。

「魚町銀天街」の歴史は古く、明治39年にえびす市から始まり、昭和26年に日本で初めてとなるアーケードが建設されたそうだ。当時の役所は「公道に屋根をかけるのは前例が無く認められない」の一点張りで許可が下りず。意を決した商店街の組合長は、東京の建設省に直接申し立てに行く。一か八かの勝負に出たのだ。この組合長のアーケードにかける情熱に動かされた役人は「試験的に許可する」と回答。魚町銀天街の商人たちの情熱が無ければ今でも全国の商店街にアーケードは存在しなかったかもしれない。

入口の大きな看板を潜り、怪しげな階段を降りていくと、地下では割烹着を着たお姉さんが忙しく立ち働いている。どこか懐かしい空間が広がっていた。左手にある銭湯の番台の様なスペースにお母さんがいて、ここで注文、支払いを済ませたら空いているカウンター席へ移る。今回は初めてなので奮発してえび天付きの800円の定食をオーダーしてみた。カウンター席に座ったら、あっという間に定食が運ばれてくる。この速さは元祖長浜屋ラーメンに匹敵するほどの感動も味わえる。音速で現れた天ぷらは噂どおりにサクサクして美味しい。付け合せの味噌汁も旨い。

とにかく「早くて、美味くて、安い」と評判のお店。目の前で天ぷらを揚げる音と香りで食欲がそそられる。

三代目店主の藤島聡さんは言う。
「ホントはお客さんが着席した瞬間に天ぷらを提供したいくらいです」

精密機械の如く次から次へと天ぷらを揚げる藤島さんは燻し銀の様に渋く輝いている。一寸たりとも無駄な動きは無い。まるで天ぷら界の「音速の貴公子」だ。
老若男女、多くの人が利用する“思郷病”の様な老舗天ぷら屋「ふじしま」さん。次回はいつ来られるのだろうか。小倉での撮影オファーが待ち遠しい。

(posted on 2017/12/27)

海老原一己

Writer:

back to top of this page
TOP