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日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム

Column

街歩き(3) パリ9区(フランス) 

同じ都市に幾度となく旅をしていると必然的に定宿というのが欲しくなり、気がつくと何件かの定宿が出来ている。そんな定宿がパリには2件ある。その1つ8区シュレーヌ通りのとあるホテルは映画「ジャッカルの日」でアサシン・ジャッカルが大統領の暗殺を企てるパリの潜伏先のホテルとして映画にも登場する。

今回紹介する「オテル・ショパン」は9区にあるパッサージュ・ジュフロアの中程に異彩のファサードを持つ知る人ぞ知る有名ホテルだ。パッサージュとは18世紀の後半に時代の先端をゆくショッピング街として市内の中心部に多く建設されアーケード付の小路で、それぞれが個性的なデザインを競い今では観光名所になっているパッサージュも少なくない。この「オテル・ショパン」が建っているパッサージュは、数あるパッサージュの中でも特異の形態をしている。先ずはホテルの前で雁行していておまけにその部分がスキップ構造になっていて高低差を解消している。こんな形態のパッサージュはパリでは此処でしか見られない。

ホテル以外でも個性的な店が軒を連ねている。その代表格が映画関係の書籍、ポスターの品揃えでは世界的に有名な「シネ・ドク」 建築、美術書のみを扱う古書店、日本ではなじみの薄いステッキ専門店、タロット用品専門店も見受けられる。究極は今なお活版印刷の手作りで名刺を作っている名刺専門店。以前興味半分で刷ってもらったところ驚きの高価格に人に渡せない名刺になってしまった。

書き忘れていたがこの界隈、数多くの映画のロケ地にもなっている。古い映画ファンには懐かしい作品「突然炎のごとく」では名匠F・トリュフォー監督が名優J・モローをこのパッサージュを走らせていて、バックには「オテル・ショパン」の文字が判別出来る。ポスターにもなっている有名なシーンだ。この作品確か1962年の作品だと思うがバックに写っているショパンのロゴは今も全く変わっていない。

これだけ書くとどれほど素晴らしいホテルかと思われがちだが、いやいや何の変哲も無いパリの典型的な2つ星のホテルだ。ただ最近は典型的な下町ホテルの様相がとある毎に紹介され予約が取りづらくなったのも事実だ。しかし過去に300泊は優に超す宿泊をしている身としては秘密のルートを持っているのも事実である。

この界隈でも下町情緒を満喫出来る多くの行きつけの店も持っている。シャルティエはホテルからすぐの有名ビストロだがとにかく安くて旨い。世紀末まではこの地域の石炭小屋だった建築をそのまま使っている奇妙なインテリアが気になる下町食堂だ。決して日本人の口には合わないいかがわしい和食屋が数多く見受けられるのもこの地域だ。夜になるとぶらつきたくなる悪名高きサン・ドニ、サン・ラザールの歓楽街もすぐそこだし、オペラ界隈までも徒歩で30分も歩けばたどり着く。
何度目かの旅行者にはお勧めの地域ではあるが、花の都パリを満喫したい旅行者には決してお勧めは出来ない地域である事は自信を持って言えるようだ。

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(posted on 2017/12/13)

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