日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム
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街歩き(1) パラッツォ・アドリアーノ(シチリア) 堀内広治

パラッツォ・アドリアーノと聞いてピンとくる人が何人いるだろう。シチリア島の玄関口であるパレルモ、カターニァから車でも優に3時間はかかる、正しく島のヘソ部分にその村は存在する。
映画好きの私の中でベストテンに入る作品のロケ地として、極々コアなファンの中では架空の村ジャンカルロとして記憶に残っている。その映画は「ニューシネマパラダイス」 ジョゼッペ・トルナトーレが自身の故郷を舞台にした1989年作の感動作品である。詳細は省くが映画好きの少年トトがジャンカルロ村唯一の映画館の愛すべき映写技師アルフレッドの進めにより島を離れ著名な映画監督として成功を収める物語である。

最初の訪問は8月の酷暑の中、広場の噴水が陽炎で霞んでいた。しかし映画で見た紛れもないあのジャンカルロ村だ。人っ子一人居ない広場でパラダイス座だけが見当たらない。それもそのはず、その劇場のみがオープンセットとして広場の一角に建てられた。少年期のトトが泣きべそをかきながら母親と歩いた石畳の小道、幾度となく描かれる広場の噴水、そのままの光景が至る所に見受けられる。撮影には村人の多くがエキストラとして参加し、主役のトトを演じた少年は今でも近郊に住んで居る。映画の完成時、村には映画館は無くエキストラの人々は大挙してパレルモにまで自身の演技?を見行った。
手作り感いっぱいの映画である。年間に百本余りの映画を見るが、SFX全盛のハリウッド映画は敬遠気味で、やはりヨーロッパの映画に足が向いてしまう。

そうで無ければその後2回もこの僻地に足を向けないだろう。いつもこの後車を2時間走らせシラクーサへ向かう。映画「マレーナ」でモニカヴェルッチが闊歩するその広場のカフェで一休止。その後再び車を走らせタオルミーナに向かい「太陽がいっぱい」のラストシーンに出てくる海岸より街の旧市街の崖のレストランへ。かのジャンレノが「グランブルー」の中でマンマの味とオーダーするパスタを食する。考えてみれば3度とも同じルーティンだ。こんな粋許も日頃思い機材を担ぎ旅に明け暮れている身としては年に2~3度の楽しいご褒美の映画ロケ地巡りである。
暫くは止められそうにもない至福の時間だ。

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(posted on 2017/10/3)

堀内広治

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