日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム
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Spin-off大阪写新世界⑪ 堀内広治

Spin-off大阪写新世界⑪

大阪北部育ちの私にとって南部エリアに属する新世界界隈は、非礼を承知で言わせてもらえば自発的に足を向ける場所ではなかった。関西人を自負する私ではあるが、恥ずかしながら初めて足を踏み入れたのは雑誌の取材で訪れた30代半ば、見るもの、触れるもの全てが新世界と云う名の「別世界」だった。恐い思いをした事も確かである。
それ以後も何度かは好奇心もてつだい「別世界」界隈を訪れたが、今回の企画の撮影で足を運んでみると、ここ数年間の変貌ぶりには驚きを禁じ得なかった。

ど派手さを競う手の込んだ看板、カラフルな装いで行き交う多国籍の観光客、子供の頃から慣れ親しんだ生粋の商人言葉は影を潜め、いつの間にか「別世界」が新世界に変貌し、イメージしていた写真がなかなか撮れなかった。初めて訪れた写真家にしてみれば、他に類を見ないアナザワールドで有り、今までに目にする事が無かった被写体が正しく「いらっしゃい」と待ち構えている。巨大なフグの提灯、至る所で目にするビリケン、串カツ屋のおっさん人形。ヒョウ柄のオバチャンが闊歩し、人力車夫が観光客を声高らかに呼び込んでいる。被写体としては組み易い部類に入るだろう。いやこれは違うだろう。新世界にあらず。あくまでも勝手な想像だが、関西の写真家達は現状を目にし、いざカメラを向けては見たが?の心境では無いだろうか。写真集自体はそれなりの評価を得、現状の新世界を切り取った、正しく今日の新世界を表現しているのだろうが、昔を知る何人かの関西人の共通を思いは「きれいすぎるわ。この写真集」だった。町自体の急変ぶりを嘆いているのか、写真集の体裁の事なのかは聞きそびれたが、私が思い描いていた新世界はもはや旧世界として思いをはせるしか無い様だ。

新世界Spin-offはこのコラムで終了致します。
以後は従来のコラムに戻りますが引き続きご愛読下さい。

 

(posted on 2016/12/13)

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