日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム
column

Spin-off大阪写新世界⑥「新世界市場に思う」 中塚雅晴

100年も続く新世界市場は大阪港の港湾事業の需要により労働力とそれに伴う食料その他の要求により大いに賑わっていたそうです。
昔の写真には市場を行き交う人でごったがえす様子やチンドン屋の姿にさぞかし活気があったのが思われます。
新世界市場のアーケードが現在の姿になったのは昭和36年9月第2室戸台風による被害により昭和38.39年頃可動式テントを設営しました。
それまでは、ヨシズなどで日除けをする程度で、冬場雪が降るといつまでも雨だれが垂れていたそうですので、通天閣と共に完成当時はモダンな町並みであったことが思われます。
しかし、私が伺った時はどこの都市でも問題になっている「シャッター街」になっていました。時代の流れと言ってしまえば簡単ですが、昭和の下町生まれの私としては、一抹の寂しさを感じました。まだまだ、こんな昭和の街が残っていて欲しい思いから、写真の力で少しでも商店街が盛り上がらないかと考えました。
私だけではなく、この新世界市場を盛り上げようと既に色々な方々が頑張っていることを後から知ることになりました。
店の門かどに飾られたポスターがユニークで思わずニンマリしてしまうキャッチコピーが楽しいポスター。それは電通と学生によるボランティア作品と知りました。
その他にも閉店したお店を借りイベントの発信基地にしている若者達に会うことが出来ました。
私なりに昭和の面影残る映画のロケ地にもなった、この街をどう撮ろうかと通いました。

まずは市場の役員をしているお弁当屋「えんむすび」さんのご主人から街の歴史や各ご店主のことを色々伺いました。
「新世界の串揚げ屋の人もお弁当買いに来るんですよ。」と自慢げに話すのも良く分かります。御飯が特に美味しい。だから撮影に行けば必ずサバ弁当を買います。でも少し遅く行くと午前中でも売切れなので新幹線を降り急いで新世界市場に駆けつけて、まずはお弁当を注文することからスタートするのが私の習慣になりました。
閉店前の昼頃、隣のシャッターの閉まった店にあるベンチでいただきます。炊きたての暖かい御飯が美味しい。それは隣に店を構えるお兄さんの食料品店から仕入れた物で、元々は「えんむすび」のご主人も穀類取扱卸をしているそうで、美味しいお米などを知り尽くしているのでしょう。
大阪の美味しいきんつばの「出入橋きんつば屋」にも丹波の黒豆きな粉を卸しているそうで、紹介してもらい、お安く買えて美味しくいただきました。

話が逸れましたが、私のことを町内の回覧板で各お店に知らせてもらい、次に92歳の店主のいる和菓子屋さんへ伺いました。
以前見たポスターの風格あるご店主は「ほんまは、お菓子好きやないねん。」とか「長生きのヒケツ? 店の残りもの食うことや。」
などのキャッチコピーが印象深く、撮影したい人と強く思いました。高齢のため多少耳が遠く、話のキャッチボールをしながら、内解けて撮影をすることが難しく、大変でした。それでもお菓子作業場に入ることが出来、家族総出でお団子を作る姿を撮影出来ました。

関西のおばちゃん御用達のヒョウ柄満載の衣料品店の女性店主はとても大らかな方です。店の半分が息子さんのオリジナル褌店になっていて、お母さんの勧めで「有名になりたいなら褌デザインをしなさい!」と始めたそうです。
息子さんはファッションデザインをしているのですが、先行して褌デザインが話題になったそうで、母親の先見の目に感謝しているそうです。

普段人通りの少ない商店街ですが、お年寄りには有難い街で例の補助カートを押して商店街を訪れると自分の必要な店に声を掛け注文だけして商店街の端まで行き、帰りがけに品物を受け取るわけで、支払いはカートから小銭の入ったタッパを取り出し、お店の人に必要分を取ってもらい商品はカートの中に仕舞ってもらう。
当然ですが、よもやま話をしに来るのが楽しみな訳で、どのお店も商売と関係ない話にも付き合ってくれます。スーパーや大型店舗にはない商店とお客さんの親しい関係が見られました。

他にも色々なお店やご主人を撮影させて頂きましたが、最後にそのお店は奥さんが履物屋さんを、ご主人がJAZZミュージシャンで海外の多くのミュージシャンのCD制作販売をしているユニークお店「澤野工房」を取材しました。
ご主人に私が撮影している思いを伝えたところ、私の心を見抜くように「ここの商店街の皆さんは図太いですから大丈夫ですよ! 今まで、商売をやって来たのですから」と言ってくれました。
この先、すぐにでも商店街が消えてしまうかもしれないと思う私のセンチメンタルな思いをその言葉でかき消してくれました。

そして、撮影は終わりましたが、また訪れたい商店街になりました。

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(posted on 2016/10/4)

中塚雅晴

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