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日本建築写真家協会

Japan Architectural Photographers Society

コラム

Column

Spin-off 大阪写新世界① 大阪写新世界を歩いて 

2015年の夏、ちょうど通天閣の免震改修工事が完成したばかりの頃、日本建築写真家協会に所属する写真家が、総出で大阪の「新世界」を撮影した。私もその中の一人として撮影に参加した。

新世界は大阪府浪速区に戦前から栄える繁華街で、昭和の雰囲気を残している、東京でいうところの浅草にあたるような場所である。

関東在住の私にとって、新世界と言えば通天閣。その塔の下に広がる町並みは日本最大の労働者街にも近く、人相の悪い人達がぎょうさん集まっていそうな感じで、ちょっと近寄りがたいイメージを持っていた。

撮影を始める前に、ロケハンを兼ねて新世界界隈を歩いてみた。
どうも最初のイメージとは違うようだ。通天閣周辺には若い女性も多く、家族連れが目立つ。飲食店も串カツ屋ばかりではない。和洋中とさまざまな店舗が軒を連ねている。思ったよりも平和・・・いや、面白そうな場所でほっとした。

しかし、ジャンジャン横丁に入ると空気は一変する。すれ違う人は皆「じゃりん子チエ」に登場しそうなおっちゃんばかり。昼間から缶ビールを片手にフラフラと歩くおっちゃん達。「撮ったらアカンで!」と言いながら満面の笑みでピースをする。ちなみに彼らを「おっさん」と呼んではいけない。「おっちゃん」と呼んでーや!と怒られた。大阪の中年男性を「おっさん」と呼ぶと、言われた男性は馬鹿にされた気になるらしい!?
「おっさん」と呼ぶ時は、その人の事が嫌いな場合が多いと言う。ホントかどうか分からない。

ジャンジャン横丁とは新世界の南東部に位置するアーケードのついた全長約180mの商店街。正式には南陽通商店街と言う。幅の狭い道に沿って、両側に串カツ屋などの飲食店や将棋クラブが並んでいる。下町風情にあふれるディープでコテコテな場所。こんなやさぐれ感満載な商店街は日本広しといえども、ここ新世界にしかないだろう。私が高校生の頃、東京の浅草から山谷地区にかけての路地裏にはこういうおっちゃんが沢山いたな・・・と妙な懐かしさを憶える。

途中、喉が渇いたので喫茶店で一服する。入口には「冷コーあります」というポスターが貼ってある。どうやら「アイスコーヒーがあります」と言う事らしい。昭和40年代を思わせる内装と真っ赤なビニールソファがなんともレトロで良い。これでインベーダーゲームがあれば完璧だな!と、一人ほくそ笑む。
綾戸智恵そっくりのハスキーボイスで猛獣柄の服を着たおばちゃんに「何でジャンジャン横丁って呼ぶの?」と聞いてみた。

戦後まもなくこの道沿いには飲み屋や射的の店が立ち並び、新世界から飛田遊郭へ抜ける道として賑わったと言う。そこを通る客を呼び込むために三味線や太鼓を鳴らしていたそうだ。そのジャンジャンという三味線の擬音が通称の由来らしい。ホントかどうか分からない。

「まいどっ!」 喫茶店を出ると、丸メガネのお兄ちゃんがいきなり声をかけてきた。
新世界人力車「俥天力(しゃてんき)」の俥夫、翔さん。ガイドブックに載っていないディープな大阪を案内する事が生きがいだと言う。翔さんのビジュアルが街並みとマッチし過ぎているので、思わずシャッターを切ってしまった。

最後になるが「大阪写新世界」を手に取った方は、是非リアル新世界に足を運んで欲しい。間違いなく、ノスタルジックな街並みとディープな大阪を体験できるだろう。

ebihara 大阪写新世界

(posted on 2016/7/28)

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